『杉浦日向子の江戸塾』 杉浦日向子
江戸をこよなく愛し、漫画やエッセイなど数々の話題作を遺して現世を駆け抜けていった杉浦日向子。本書は、その杉浦日向子が、六人の仲間とともに、魅惑の都市・江戸とそこに住む人々の魅力を語った、究極の江戸案内である。
北方謙三氏とは、カッコいい男たち、化粧とファッション、そして色恋の話、宮部みゆき氏とは、食と酒、旅と信仰の話、山崎洋子氏、田中優子氏とは、たくましく生きる女たちの話、石川英輔氏とは、技術と遊びごころの話、高橋義夫氏とは、暮らしと風俗の話。
「熊さん、八っあんも、銀しゃり食って、朝から酒を飲んでいた」「ご飯を炊くのは男の役目」「鰻屋の離れがデートスポット」「江戸は間男が多かった」など、目からウロコの一言に、対談者は絶句。聞き手の巧みな質問に誘われて、江戸の「なぜ」が次々明らかになる、「日向子ワールド」全開の対談集。単行本未収録の1本も掲載。「文庫化に寄せて」は、杉浦日向子を師匠と慕い、二番弟子を自認する宮部みゆき氏。(書籍紹介より)
普段なら大御所の北方健三氏や宮部みゆき氏が「師匠」と呼んでいた杉浦さん。彼女が語る江戸の暮らしはわたしたちの想像よりも、ずっと自由だったようですね。圧倒的に男性が多い町だったから、町人の男女の付き合いは女性上位。女性から誘うことも多かったし、男性から誘う場合には、力いっぱいおしゃれして行くなんて、想像しただけでにんまりしてしまいます。
「鰻屋の離れがデートスポット」という話にはビックリ!最初につまみとお酒が出てきて、うなぎが焼けるまでの1時間くらいは部屋で二人っきり。なるほどねぇ「あいびきに鰻屋がおすすめ」なのは、そういう理由だったんだ!
(杉浦)だから八百屋お七のようなタイプは非常にまれで、あれは上方の情念に近い。
(北方)上方の情念と、江戸の色事って違うんですか。
(杉浦)全然違います。江戸の場合は、会っているときが楽しくて、輝ける時間をともに過ごせればそれでいいんです。別れたら何をやってもいい。ですから非常にドライな関係です。
(北方)いいなぁ、それ(笑)。
(杉浦)つまり会っていないときにも、その人のことを思い続けるのが恋で、さよならをしたら別の人のことを考えるのが色。だから江戸ではあまり心中がなかったんですね。多かったのは上方です。
有名な「曽根崎心中」は大阪堂島の話でしたね。江戸の人はあまり心中しなかったって初めて知りました。井戸に飛び込むという死に方があるけれど、「江戸の井戸は浅いから死ねないよね」という北方さんの話にもなるほどねぇって思いました。
江戸の男女関係はドライだから、別れても次を見つければいいっていう感じだったので死ぬ必要がなかったのでしょうね。シングルマザーも結構多かったらしいけど、町の人がみんなで育ててくれるから、意外と子育ての悩みはなかったというのも、現代より生きやすい暮らしぶりだったのかもしれません。
(杉浦)お稲荷さんは、無視されるのを非常に嫌う神様なんで、町なかのにぎやかなところにあるんですよ。だからお稲荷さんの鳥居の前を横切るときは、願い事があろうとなかろうと、ペコっとお辞儀しなくちゃいけない。今はそんなことをする人は見かけませんけれど、昔の人はみんなやっていました。
町なかにお稲荷さんがたくさんあるなぁと思っていたら、お稲荷さんは寂しがりだったんですね。これからは、ちゃんとお辞儀しなくっちゃ!
江戸の暮らしって、人間的でありつつも合理的で、これぞ人間らしい暮らしだなぁって感じます。現代のような、家族単位で閉じこもる生活じゃダメなんだなってことがよくわかりました。貧乏長屋みたいにあけっぴろげに生きていたら、家庭内暴力や孤独死とか、悲惨なことが起きづらいもの。人はひとりじゃ生きていけないんだからねぇ。
家と家の距離が近くて、隣で何を食べているのかもにおいでわかっちゃうし、赤ちゃんが泣いているのも聞こえるし、みたいな下町で育ったわたしにとって江戸の暮らしは、とても親近感がある暮らしだなぁって思えるのです。
2253冊目(今年273冊目)
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