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『旅屋おかえり』 原田マハ

旅屋おかえり

原田マハ(はらだ まは)

集英社文庫

第12回エキナカ書店大賞受賞(2019年)

 「おかえり」こと、丘えりかさんは人気旅番組の出演者だったのですが、急に番組が打ち切りになってしまい、これしか仕事がない彼女と彼女の所属事務所は大ピンチになってしまいました。

 そんな彼女の元に舞い込んだお仕事は、病気で旅に出られない女性の代わりに旅に行って欲しいという依頼でした。最初はかなり悩んだのですが、自分には旅をすることしかできないと決断したおかえりさんは秋田県角館へ桜を見る旅に出かけます。

 

とうとう帰ってきたのだ。旅の真ん中に。そして、いよいよ始まったのだ。前代未聞の旅行代理業「旅屋」が。(本文より)

 どういう旅をしようか、仲間たちも手伝ってくれていい案ができました。ビデオカメラの使いかたのレクチャーも受け、いざ旅に出たのです!自他ともに認める晴れ女の自分なのに、現地についてみたら雨!前途多難ですけど、現地まで行ってみるしかない!

 旅の醍醐味は、計画とは全く違うことに出会うことかもしれません。山奥の温泉旅館へ行ってみたら雪になっちゃうし、温泉のレポートを撮りたくても自分ひとりだけじゃ、カメラを回せないということに気づいたり。でも、そういう困ったことが逆に素晴らしい結果を産むことだってあるんです。

 おかえりさんは、旅することが自分の天職だと信じています。だから、その熱意が新しい仕事を生み出すことができたような気がします。

 

 自分の旅の記憶を思い出しても、計画通りだったことはたいして記憶に残っていなくて、ハプニングこそが旅の記憶として残るんですよね。

 飛行機の乗り継ぎ時間を間違えたり、ヒッチハイクしてトラックの荷台に乗せてもらったり、ダブルブッキングで予定のホテルに泊まれなかったり、そういうことっていつまでも忘れずにいます。

 

 自分の代わりにぬいぐるみに旅してもらうという企画を立てている旅行社が実際にあるくらいですから、おかえりさんのような仕事をされている方は実際にいるかもしれません。これから、こういう仕事はますます需要が増すような気がします。

 おかえりさん、よい旅を続けてくださいね。

2262冊目(今年282冊目)

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