『そして、バトンは渡された』 瀬尾まいこ
高校生の優子は父と2人暮らしだけど、この父とは血がつながっていない。彼女には母が2人と父が3人いて、現在の父のことは森宮さんと呼んでいる。でも2人は仲良しで、朝ごはんも夕ご飯も、いつも一緒に食べて、おやつも食べて、冗談を言い合っている。幸せなんだけど、優子は普通の親子ってどんな感じなんだろうって思うことがある。
クラスメートに聞いてみると、父親と話なんかしないし、そもそも話が合わないし、優子のところみたいに仲良くしているのって、自分のうちじゃ考えられないと言われてしまう。血のつながった親子ってそんなものなのか?って想像してみるけど、よくわからない。
今の父親のところに来て、わずかの間に2番目の母親はどこかへ行ってしまった。自分を産んだ母親は小さいころに死んでしまった。だから2番目の母のことをずっと母親だと思って生きてきたけど、彼女は同じ場所にとどまることができない人。これはしょうがないことだと諦めている。
という大変な育ち方をしたのに、優子は意外とそれを苦にしていない。親は変わってきたけれど、それぞれに愛を注いでくれたし、決して無理をしてそうしていたというわけでもないし、自分は自由にさせてもらってきたし、自分は割と幸せな方だって思ってる。
人の育ち方って色々だから、これが幸せ、これが不幸せって他人が決めるものじゃないのよね。傍から見たら優子が育った環境はとんでもないって言われそうなものだけど、それがすべてかな?世間的にはきちんとした家に育ったって、それを不満に思って出て行ってしまったり、暴れたりする子どもだっているんだから、自分の環境をどう受け止めるのかは本人次第なんだよねって思う。
この主人公の生い立ちについては賛否両論らしいけど、こういう子が素直に育つはずがないなんていう思い込みは捨てたほうがいいと思うな。人はそれぞれの生き方をしてるんだから、それを尊重しようよ!
解説が上白石萌音さんというのにビックリ!朝ドラの安子さんを演じている女優さんじゃありませんか!この物語の主人公を演じても似合いそうな感じですよね。この本をとても気に入って「瀬尾まいこさん勝手に応援キャンペーン」をしていたという彼女の文章はとても楽しかったです。
2265冊目(今年285冊目)
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