『日本語とにらめっこ』 モハメド・オマル・アブディン
アブディンさんはスーダン出身、生まれた時からの弱視で、12歳の時に視力を失う。19歳で来日し福井県立盲学校で鍼灸を学んだのち、東京外語大学へ進学。スーダンの南北紛争について考察するため、アフリカ地域研究の道へ。同大学大学院に進み、2014年に博士号を取得。(著者紹介より)
日本の盲人だったら、盲学校で点字を習い、鍼灸師になるというのは普通のパターンですが、スーダンではそうではないのだそうです。そもそも母国で点字を使うことはほとんどなく、日本に留学するための日本語学習で点字を学ぶようになったのだそうです。そして、鍼灸を含むマッサージの仕事はスーダンでは盲人の仕事ではないので、国に帰ってもこれで生計を立てるのは無理だというのです。
アブディンさんは、耳で聞いた言葉を覚えることで学習していたので、記憶力には自信があるのだそうです。日本語の学習も、もちろん点字のお世話にもなったけど、耳からの学習が大事だというのです。
日本に来てからはラジオをよく聞いていました。ニュースや情報番組だけでなく、スポーツ中継も楽しんでいて、野球中継を聞くのが好きだとか。サッカー中継はラジオだとよくわからないけど、野球は展開がさほど早くないので、言葉だけ十分に楽しめるのだそうです。
テレビのドラマも、セリフが多いものならそのまま聞けばいいし、副音声の説明のことばがなかなか面白いのだと語っています。
アブディンさんが奥様に「あんたも目が見えていたら、日本語できるようにならなかったよ」と言われたという話。小説を読むというと、漢字の困難を思わずにいられなかった私に、音声で聞けば漢字の障壁は吹き飛ぶという、考えてみれば当たり前の事実に気付かせてくれた。これなら、目の見える人でもできる。アブディンさんの話から得られるものは、ほかにもたくさんある。(おわりに より)
日本の文章を文字で読もうとしたら、確かに漢字という大きな壁がありますけど、音声で読むことでそういうことを感じずに読書ができていたというのは幸運だったのかもしれません。
でも、アブディンさんは漢字をちゃんと勉強しているのです。同音異句や人名の説明には漢字が必要だと日本語の先生に教わってから、漢字に興味を持つようになりました。最初は形のイメージがわからないので粘土で形を作ってもらって、それを触って覚えたのだそうです。
「大の字」とか「十字」とか、普段の会話で必要な文字の形を知ることはとても大事なのだそうです。公共の「こう」というような表現をして話をすると、晴眼者からビックリされるのだそうです。
母国語でない言葉で勉強するだけでも大変なのに、研究のための資料文献などは点字化や音声化されていないものがほとんどです。最近はコンピュータのおかげでだいぶ楽にはなりましたけど、みなさんの協力のおかげで今日の自分がいるとおっしゃっています。
でもね、みんなが協力してくれたのはアブディンさんのお人柄ありきなのだと思います。勉強熱心で、人懐こくて、おやじギャグが好きな楽しい人だから、みんなから愛されているんだろうなぁ。これからの益々の活躍をお祈りしています。
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