『活版印刷三日月堂 5 空色の冊子』 ほしおさなえ
このシリーズに登場した人たちの様々な過去が描かれています。そこに登場する人たちの悩み、夢、挫折、喜び、悲しみ、希望、様々なものに溢れていて、それぞれのシーンに胸が震えてしまいます。
自分が思うように生きてこれなかった人、幼い子を残して死んでしまった母、希望をもって都会に出たのに夢破れた人、そんな人たちが、一度は挫折しても、もう一度立ち上がれたのは、それを見守ってくれる友がいたからです。活版印刷三日月堂に関わる人たちはみな、不思議な縁で結ばれているのですね。
自分だけでは気づかずにいた何かを友が見つけてくれたから、だから生きていける、そういう人生っていいなと思います。
この7篇が収められています。
・ヒーローたちの記念写真
好きなことを仕事にしたのが幸せだったのか、不幸せだったのか
・星と暗闇
弓子さんの父と母の出会いは天体観測会でした
・届かない手紙
誰かに届けるのが手紙だけど、誰にも届かない手紙を書いたっていいんだよ
・ひこうき雲
親が薦める人と結婚したけれど、結局愛することができなかった
・最後のカレンダー
弓子さんのお祖父さんは毎年和紙屋さんのカレンダーの印刷をしていました
・空色の冊子
お祖父さんは、あのカレンダーが最後の仕事だと思っていたけれど、もう一つだけ印刷の仕事をしたのです
・引っ越しの日
横浜に住んでいた弓子さんは、お父さんの死をきっかけに川越に引っ越すことにしました
これまで読んできた話の隙間を埋めていくような心温まる物語に、ページをめくるのが止まらなくなりました。
2288冊目(今年308冊目)
活版印刷三日月堂 1 星たちの栞
活版印刷三日月堂 2 海からの手紙
活版印刷三日月堂 3 庭のアルバム
活版印刷三日月堂 4 雲の日記帳
活版印刷三日月堂 5 空色の冊子
活版印刷三日月堂 6 小さな折り紙
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