『赤いモレスキンの女』 アントワーヌ・ローラン
パリの書店主ローランはある朝、道端で女物のバッグを拾った。中身はパトリック・モディアノのサイン本と香水瓶、クリーニング屋の伝票、そして不思議な文章が綴られた赤い手帳(書籍紹介より)
警察に届けに行ったのだけど、窓口が混んでいてバッグをそのまま持って帰ってきてしまったローラン。何か持ち主の手掛かりはないかとバッグの中身を見てみると、携帯電話や財布や身分証明になるようなものが見当たらない。
書店を営んでいるローランがビックリしたのはパトリック・モディアノのサインが入った本があったこと。そのサインに「ロールへ」と名前が書かれていた。そして更に心惹かれたのが赤いモレスキンの手帳、そこにはきっと彼女の短文が書かれていて、これを書いた人はきっとステキな人なのだろうと想像してしまったのです。
クリーニング店の伝票はあったけれど、店の名前は住所が書かれていないし、あとは化粧品や装飾品など、持ち主のヒントになるようなことは何も見つからないけれど、何とかしてバッグの持ち主を探したいと思うのです。
わずかな手がかりからロールという女性を探しているうちに、どうも彼女が気になってしょうがない、あったこともない彼女に恋してしまったような不思議な気持ちのローランです。
別れた妻のところにいる娘が時々やって来ます。娘はローランのことを割とカッコいい男だと認識していて、母親の今のボーイフレンドがイマイチであることを話したりするんです。こういう所がフランス人なのかしら?親子であっても一人の人として見てるんだなというところが、ちょっとうらやましい感じがします。
物語の中に登場した「パトリック・モディアノ」という人は実在する作家で、2014年10月に「最も捉え難い人々の運命を召喚し、占領下の生活世界を明らかにした記憶の芸術」であるという理由により、ノーベル文学賞を受賞した方なのだそうです。そういう方が書いた本を読んでいる女性に興味を持ったというところが、これまたお洒落だなぁ!
ミッテランの帽子もよかったけど、この作品もステキでした。
↓ これはフランス語版の表紙、「赤い手帳を持つ女」というタイトルです。
2302冊目(今年1冊目)
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