『やわらかい頭の作り方』 細谷功 ヨシタケシンスケ
ヨシタケシンスケさんの表紙のイラストに惹かれて読んだこの本、なかなか痛いところをついてくるなぁと思いながら読みました。
「遠くのものの方がありがたい」
親よりは親戚、親戚よりは学校の先生、学校の先生よりは塾の先生のアドバイスの方を聞く
身近な人から言われるとムカッと来るようなことでも、自分にとって距離感がある人、たとえば有名な人がネットで言っていたとか、本に書かれていたということだと素直に聞けてしまうということがよくあります。現実に即していないから変えてくれと言っていた法律が、これまではなかなか変わらなかったのに、外圧であっさり変わってしまうこともあります。
遠くのものの方がありがたいというのは、不思議な心理だなと思います。
パスカルは、ある友人に出した手紙の最後で「今日は時間がなかった為に、このように長い手紙になってしまったことをお許しください」という趣旨の言葉を残しています。
本当はもっとすっきりとした手紙を書きたかったのに、考える時間がなかったので短くまとめることができなかったことを反省しているというパスカルの言葉です。こういうことをちゃんと考えているパスカルはエライ!
ダラダラ長かったり、何を伝えたいのかわからなかったり、自分勝手な文章を書いている自分を反省しないといけません。
「頭の固い人」と「頭のやわらかい人」の決定的な違いは、こうした身の回りの「線」を「変えられない絶対的なもの」として考えるか、「必要なら変えてしまえる便宜上のもの」として考えるかにあります。線を絶対に守るべき最終目的と考えるか、単なる手段と考えるかの違いとも言えます。
自分の考え方が原因なのです。これはもう変えられないものだと思い込んでしまっていると、選択肢はそれしかないのです。でも、そのやり方を変えたって、それをやらないことにしたって、実は困らないことが世の中にはたくさんあるんです。
たとえば、お昼ごはんを12時ころに食べると思い込んでいる人が大勢います。だからその時間帯はどこに行っても混んでいるのです。それを1時間遅くしたら混雑はほとんどありませんし、2時間遅くしたらもう誰もいないかもしれません。学生時代のように早弁したっていいんだし、お昼ごはんを食べないという選択だってあるんです。
本当に「自由度が高い」ことを好む人にとって「面倒見が良い」というは、「うっとうしい」以外の何物でもありません。それなのに肯定的にとらえているということは、実は大部分の人は「制約されること」を望んでいるのです。
誰かが自分にお節介してくれること、何も考えないでオートマチックに物事が進んでいくこと、それは一見楽なことに思えます。でもそんな風に、自分の行動に疑問を持たずに、流されるままで生きていると、自分は何を求めているのかを忘れてしまうんじゃないかしら?
それは本当に自分が望んだ人生なのかしら?
それが得意な誰かにお願いすることは、もちろんアリです。でも、自分なりの好みを通すのもアリです。ここは自分でやろう、あそこは人に頼もう、そういうことを考えるのが人間なのだと思います。
常に考えること、疑問を持つこと、それが「やわらかい頭」を維持する秘訣なのかしらと思うのです。
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