『ライオンのおやつ』 小川糸
雫さんは瀬戸内海の島にあるホスピス「ライオンの家」へやってきました。まだ33歳で死と向き合うのは辛いけど、余命わずかとなった今は、病気がみつかったころよりはかなり心が穏やかになったように思います。
そして1週間に1回、誰かからのリクエストに応えて作ってもらえるおやつを楽しみに、雫さんは毎日を過ごすようになりました。
おやつの時間をあなたが毎回とても楽しみにしてくれたことが、何よりの慰めです。おやつは、体には必要のないものかもしれませんが、おやつがあることで、人生が豊かになるのは事実です。おやつは、心の栄養、人生へのご褒美だと思っています。(本文より)
自分が病で死ぬということを知った時、どんなことを思うのでしょうね。残される家族のこと、自分がやり残していること、絶望、あきらめ、何を心の支えにしようかということ、いろんなことを思い悩むのでしょうけど、雫さんは「今を楽しむこと」しかないと気付いたのです。もう治療のしようがないことがわかって、痛みや辛さを抑えることを第一に考えるようになって、ちょっと気持ちが楽になってきたようです。
数年前に仲の良かった友達が亡くなりました。彼は最後まで治療する方法はないかと模索し続けていました。薬の副作用で髪が抜けたり、気分が悪くなったり、骨粗鬆症になって骨折したりしました。杖をついて歩く体力がなくなって電動車椅子に乗るようになってから、バスや電車でコンサートや美術館へ行ったりしていました。少しでも動き続けることで自分は自由だと思いたかったのかもしれません。
彼はホスピスとか緩和治療という方向へは向かいませんでした。たぶん負けを認めたくないという気持ちだったのでしょう。
日本ではまだまだホスピスは余り身近ではありません。それは最後まで治療し続けるという考え方の人が多いからなのでしょうか?
この物語に登場するようなステキな最後の場所があったら、わたしもそこに行きたいとお願いすると思います。だって、最後は人間らしい死に方をしたいですもの。
2316冊目(今年15冊目)
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