『ベリーベリーグッド レターエッセイ集」 松浦弥太郎
松浦さんの文章を読むたびに、きちんと生きている人ってすごいなという気持ちになります。彼にとっては普通のことなのかもしれないけど、いつも自然体でいて、なのに周りの人のことを良く観察していることに気がつくのです。
僕が暮しの手帖社にいた頃、創立者の大橋鎮子さんに編集者の採用条件を聞いたことがある。すると「とにかくいろんなことを経験している人がいいわね」と教えてくれたことを思い出した。
これまでの記憶、そしてこれからの経験くらい尊いものはないと強く思った。p39
「いろんなことを経験している人」を評価してくれる人は、きっとたくさんの経験をしてきたからこそそう思うのでしょうね。いろいろな経験があるということは、いろいろな視点を知っているということだと思うのです。Aという視点からだと正しいことが、Bという視点からだと正しくないかもしれないということを、知識としてではなく、体験として知っているということが大事なのです。自分がそこにいたらどう思うのだろう?という視点をいくつも持てることが素晴らしいのです。
つくづく思うのは、すごいとか、素晴らしいとか、すてきとか、かなわないとか、そういう感動を、年齢を重ねてもできるのか。そして、そういう感動できることを、年齢を重ねても、見つけることができるのか。そういう好奇心を保てるのかどうかだ。それはいわば、いくつになっても、人間が好きでいられるのかどうかであろう。
自分以外の人は皆、自分に何かを教えてくれる先生である。
その人が、自分にとっての何の先生かは、自分が見つけなくてはならない。先生を見つけるのも、自分でしかないんだ。p149
自分が自分がと主張する人が大勢います。逆に、誰かの陰に隠れて「わたしなんか」という人もいます。どうして両極端な人が多いのでしょう?自分にしかできないこともあるし、自分にできないことはもっとたくさんあるし。でも、何にもできない人なんていないのです。今できなくても、上手な人に教わればいいだけのことなのです。
上手な人のやり方を見ていると「ああ、そういうアプローチがあったのか」とか「そこは、やらなくていいんだ」というものが見えてきます。自分の思い込みが、上手くできない原因だったのだと気がつくことがよくあります。
「自分以外の人は皆、自分に何かを教えてくれる先生」という言葉を座右の銘にしましょうか。
2343冊目(今年42冊目)
« 『天国からの宅配便』 柊サナカ | トップページ | 『謎解き葬儀屋イオリの事件簿』 持田ぐみ »
「日本の作家 ま行」カテゴリの記事
- 『これからの時代を生き抜くためのジェンダー & セクシュアリティ論入門』 三橋順子 334(2023.12.01)
- 『美徳のよろめき』 三島由紀夫 339(2023.12.06)
- 『君と過ごした、さよならの季節』 水瀬さら 323(2023.11.20)
- 『地方消滅』 増田寛也 297(2023.10.25)
- 『昭和史の10大事件』 宮部みゆき、半藤一利 295(2023.10.23)
コメント