『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』 河合雅司
日本の労働生産性はOECD加盟37ヵ国中26位である。これは米国の6割程度に過ぎず、同じ金額を稼ぐのに米国が1人で済むところを、日本は1.7人ほど必要とするということだ。
人口減少に伴い新規人材の採用が難しくなり、マーケットが縮小していくことが避けられない以上、日本企業が生き残るためには、1人当たりの労働生産性を向上させて、米国をはじめとする諸外国との差を縮めていくしかない。p132
日本はカイゼンの国だったはずなのに、日本は高度技術の国だったはずなのに、なぜ生産性の低い国になってしまったのでしょう?
昔、公務員のことを揶揄して「遅れず、休まず、働かず」と言っていましたけど、日本中がそういう状況になってしまっているんじゃないかなぁ。最近、働かない中高年のことを「妖精さん」なんて呼ぶそうですね。そんな人を養っていく余裕のある会社ってまだあるのですか?
「コロナ前」から一部の富裕層にはオフィス街に近い地域への「職住近接」の動きがみられたが、アフターコロナになってもこれは続きそうである。p174
お金持ちは都心に住み、それほどお金はないけれどリモートワークに対応しなければならない人たちは、家族一人一人のスペースを十分にとれる郊外に住むという二極化が進みそうです。となると、本当にお金のない人はどこに住めばいいのでしょうか?
「社会の老化」の中で、とりわけ看過できないのが、若い世代に手かせ足かせを嵌めたことである。政府や自治体は「高齢者の命を守るために、若い方は外出を控えるように」と繰り返し呼びかけた。
だが、政府のこうした考え方は全く見当違いだ。守りべきは、社会の苦境を転じ得る若者の方である。若い世代の動きが止まったらますます、社会の勢いはなくなってしまう。自ら国家を滅ぼそうとしているようなものだ。p201
「高齢者の命を守るために」という言葉は、一見正しいようでいて、若者にとっては辛いことばかりですよね。学生は修学旅行にも行けず、入学式や卒業式に親も参加できず、就職の面接もリモート、結婚式は何度も延期、妊婦がコロナに感染したら重症化するリスクが高いのに入院できる病院は少ない。リモートワークと言われても家の中にそれほどのスペースはなく、そもそもリモートワークできるような仕事ではない人も大勢います。
デジタル化の遅れ、少子化対策の遅れ、年金問題、労働力減少、地球温暖化、どれをとっても、これまでの時代のツケです。
先のことを真剣に考えていない「老化した社会」のツケを、若者たちにたくさん残していくだけにしてはいけないと、高齢者は考えなければなりません。それを考えないでいたら、日本から若者はいなくなってしまいます。
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