『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』 木下龍也 岡野大嗣
短歌は、5・7・5・7・7のリズムで作る短い詩です。北原白秋の「白鳥はかなしからずや 空の青海のあをにも染まずただよふ」や石川啄木の「ふるさとの訛りなつかし 停車場の人ごみの中にそを聞きに行く」などは、この短文の中にその景色が鮮やかに浮かぶところがすごいなと思います。
現代の短歌だと、やはり俵万智さんの「サラダ記念日」が秀逸ですね。『「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日』こんな風に、普通の言葉での短歌というのは衝撃でした。
朝ドラ(カムカムエブリバディ)で高校生になった主人公の弟があこがれの人からこの本を借りていたのが印象的でした。何かいいことがあったら記念日にしてしまう姿が微笑ましいです。
わたしが久しぶりに読んだ短歌集がこの作品。普通の言葉で日常を描いていて、特別なことが起きたわけではないけれど、今を生きている人の息遣いが聞こえる感じです。
行先に対し垂直方向を向いて僕らが待つのは電車
ああ、こういう視点って考えたことがなかった!電車に乗っても垂直方向のまま行き先に向かうわたしたちは、行き先のことを真剣に考えていないのかもしれません。
雨がやむのを待っていたはずなのか帰りたくなかっただけだった
そうなのよ、言い訳が欲しいだけで、グズグズしている理由は雨でなくても構わなかったのよね。
泣きたがる顧客のために新鮮な不幸を買いにゆくテレビ局
世界のどこかで誰かが死んでいても、隣の部屋で叩かれている子がいても、それを知らされなければなかったのと同じだけど、それだけで終わっちゃいけない。 世界中の不幸を売り物にしているのはテレビ局だけじゃないけどね。
2358冊目(今年57冊目)
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