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『一橋桐子(76)の犯罪日記』 原田ひ香

一橋桐子(76)の犯罪日記

原田ひ香(はらだ ひか)

徳間書店

 桐子さんは両親の世話をしているうちに、結婚もせず70歳を過ぎていました。両親が亡くなった後、夫を亡くした親友のトモさんと2人暮らしをしていたのに、彼女が病気で亡くなってしまって、76歳でたったひとりになってしまったのです。わずかな年金と清掃のパートの収入では貯金もままなりません。この先どうしようと悩んでいるときに、テレビで高齢受刑者が刑務所で介護されている姿を見ました。そして、刑務所へ送られるような犯罪を起こせば、あそこへ行けると思い、自分にできる犯罪について考えるようになったのです。

 これは、とても現実的なお話です。主婦だったり、親の介護で仕事をしていなかった人の年金は本当にわずかな額しかありません。持ち家だけでもあればともかく、お金の心配は老後にはつきものなのです。桐子さんのように不安を抱えている人は、世の中に大勢います。でも、そういう相談に乗ってくれる人はなかなかいないのです。というか、誰に相談していいのかわからないのかもしれません。

 

 万引きならできるかもしれない。コピーで偽札は作れないの?などと犯罪について考えるようになった桐子さん。清掃に行っている会社の人や、コンビニの女子高生といろんな話をするうちに、世の中にはいろんな犯罪があるがあるのだということがわかってきました。でも、自分が実行するとなると、なかなか勇気がいることだったのです。

 第一章 万引
 第二章 偽札
 第三章 闇金
 第四章 詐欺
 第五章 誘拐
 最終章 殺人

 桐子さんは、トモさんの次男のお嫁さんから聞いたトモさんの秘密にビックリしました。夫の死を待っていただけではなかったのです。一緒にいるだけで息苦しい夫が亡くなった時、トモさんは初めて自由を勝ち取ったような気持ちになったのかもしれません。

 わたしの友人が昔話してくれた「うちのお母さんがね、酒乱だったお父さんが早くに死んでくれて助かったと言ってる。今はノビノビ暮らしてるよ」という話を思い出しました。

 

 老後のことを考えるとき、まず最初に考えるのはお金のことだけど、自分には頼れる人がいるかということの方が大事なのだと気付かされました。桐子さん、これからも元気で、明るい毎日を送っていってくださいね。

2362冊目(今年61冊目)

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