『他人の壁』 養老孟司 名越康文
(養老)僕に言わせると、なんでわからなきゃいけないのかという話なんですけどね。わからなくたったって、お互いがぶつからなければいいだけなんですよ。自分はこっちいくけど、あなたはあっちへ行く。そういうことでまったく問題ないし、人ってそういうものだと思いますけどね。
(名越)要するに、養老先生とすれば、わからなくてもいいから、同じ方向へ行ってぶつからないように、少し調整するということですか。
(養老)ポイントは実はそこだけ。相手が出しているサインのようなものがいくつかあるはずなんで。それだけ押さえておけばいいんです。「あ、これが出たときは話しかけないほうがいいかな」とか、「今は近づかない方がいいな」とかね。だって、本当に他人をわかろうなんて思ったら、エライ大変なことになってしまいますよ。僕なんか女房と、何十年一緒にいるかわからないけど、いまだに全然わからない。(本文より)
家族だから、友達だから、同僚だから、というだけで相手の気持ちがわかるなんてことはありえません。なのにそういう思いに駆られている人が多いのは何故なのでしょう?「話せばわかる」とか「努力すればなんとかなる」という勘違いが心を病む原因となるのですが、そこに気づかない人が多いのは、みんな真面目な人たちだからなのでしょうか?それとも、自分勝手な人たちだからなのでしょうか?
「人をわかりたい」は、自分がわからないの裏返し(p39)
「自分のことがよくわからないからこそ、人のことをわかりたいと思う」というパラドクスに陥っているのは、若い人の方が多いんじゃないかと養老先生は分析しています。しっかりとした自分があれば、人のことなど気にならないけれど、自分がフラフラしているからこそ人の言動が気になってしょうがないのです。
他人を見下す人は固定観念にとらわれすぎ(p202)
このごろ、いろんなところでキレる老人というのが話題になっていますけど、その原因は「固定観念」なのかなと思うのです。ATMなどで操作が上手くできなくて大きな声をあげているような人って、「こんな面倒なことを自分にやらせるお前が悪い」みたいな論理になってることが多いけど、どうしてそっちへ行っちゃうのかなぁ?
そこ、意地を張るところじゃないでしょって思うんだけど、そういう人を説得するのは面倒だからなぁ、近づかないのが一番って思われてるのに気がついてる?
世の中のことはすべてわかりっこない(p207)
世の中のすべてがわかる人なんていないのは当り前なのにねぇ。自分だってその中のひとりなんだから。
「これ分らないんだけど、教えてくれる?」ってなんで言えないんだろう?誰かに質問するとか、お願いするのがどうしてそんなに嫌なんだろう?わからないこと、覚えられないことがあるのはしょうがないんだから、誰かに頼るしかないことがたくさんあるってどうして割り切れないんだろう?
そんな当たり前のことを否定していたら、生きていくのは大変よねぇ。周りの人も困るけど、一番大変なのは本人なのよね。
他人のことはわからない。相手から見れば自分のことはわからない。それさえわかれば、生きていくのが随分楽になると、この対談を読んでいるとよくわかります。
自分のことを、一番よくわかっていないのは自分だってことに気づかないとね(笑)
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