『努力不要論』 中野信子
バカロレアは、フランスで大学入学資格を得るための全国統一国家試験のことです。声を取得することで原則、どの大学にも入学することができるのです。
バカロレア初日の哲学の試験は、どんな問題が出題されたかテレビのトップニュースにもなるくらい、毎年フランスっ区民の関心を集めるイベントになっています。
理系の学生にも哲学の試験が課せられます。試験問題は、記憶力だけでは解けないような、ユニークな設問。
たとえば、2013年度の理系の哲学の問題は、
①政治に関心を持たずに道徳的にふるまうことはできるか?
②労働は自意識を持つことを容認するのか?
③ベルクソン「思考と動き」の抜粋に対する解説 といった調子です。
この哲学の試験を導入したのはナポレオン、1808年のことです。哲学を深く学ぶことによって、人はより自由に思考することができる、そして自由な思考こそが人間をより自由な存在にする、との考えからです。
生まれつきの記憶力でも、ガリ勉の努力でも太刀打ちできない試験です。
普段からどれだけ、考える喜びを味わい、思考の楽しみを知っているか、それが高等教育の原点にある。こうした哲学教育が、文化国家として世界各国から一目置かれる、フランスの土台となっているのです。(p27)
これがフランス人がフランス人たるゆえんなのかしら?日本がこれをマネしようとしても、きっと「傾向と対策」ってことになるのでしょうね。自分の頭で考えるということをさぼっていたら、自己肯定する気持ちが生まれるわけがないのに。
自分を痛めるつけることを努力だと思っているのが日本人という傾向はあるようです。(p102)
「根性論」が無駄であるだけでなく、体や精神をむしばむものであるということが、やっと世間に広まりつつある今日この頃ですが、そういう正しい考え方についていけない人が世の中には大勢いるようです。
中野さんがこの本の中で何度も繰り返して言っていますけど、生まれつきの才能なしにはどうにもならないことがたくさんあるのは事実なのです。背が高くなければバレーボールでは当然不利です。何も教わらなくても走るのが早い子がいます。記憶力が生まれつき良い人がいます。それを努力で何とかしようという根性論によって、自分自身の首を絞めている人が大勢いるんです。
同じトレーニングでも、そのやり方や意味を正しく理解しているかどうかで結果は違ってきます。指示されたからやっているのか、自分の意志でやっているのか、そこが問題なんです。自分自身のことをちゃんと考えていないからこその「根性論」なのだと思います。
本当に好きなことなら、それは辛くない、本人にとって「努力」という感覚はないものです。嫌だけど頑張るのが「努力」だということに気がついたら、それは無理ということが自然とわかりますよね。
自分の嫌いなところというのは、自分でも気づいている自分の資質です。資質ではなく、才能に置き換えてもいいかもしれません(p169)
自分は小心者である。自分の容姿に自信がない。勉強ができない。運動神経が悪い。そんな風に自分の嫌なところを誰しも持っています。でも、それこそが自分の才能なのかもしれないと考えるというのは、盲点なのかもしれません。自分にはできないから誰かに頼むのが得意。怠けものだからストレスがたまらない。そんな風に考えたら、自分自身の評価はこれまでとは全く違うものになりますね。
自分自身の嫌なところって何だろう?
自分のことばっかり話している自分。人が間違った方向へ進むのを黙って見ている自分。スタートダッシュは速いけど飽きっぽい自分。友達だからと思って付き合っていて、何年もその相手が薄情な人だと気がつけなかった自分。
よく考えてみると、わたしは「努力」が嫌いです。人が見ていないところで頑張って自主練するとか、朝早く起きて何かするとか、ありえないなぁ。サラメシを見ていると朝5時から起きてお弁当を作っている人が出てきますけど、わたしには無理!お弁当を持って行っていたころは、おかずは前の晩にお弁当箱に詰めておいて、朝おにぎりを握るだけでしたね。それで問題ないって割り切れるところがわたしの長所かも?
この本を読んでみて驚いたのは中野さんという素晴らしい方が、悩みを持っていたことです。たぶん脳の特性なのでしょうけど、共感力が薄い自分が他の人と関わっていく中で様々な対処をしてきたというのです。本人としては不本意だけど、人間関係の摩擦を逃れるためにいろいろと工夫を凝らしてきたという部分は、同じような悩みを持っている人にとって、とても参考になる点だと思います。
「努力は報われる」という美しい言葉に騙されないで生きていけたら、人生はもっと楽になる!ですね。
2414冊目(今年113冊目)
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