『パラリンピックは世界をかえる ルートヴィヒ・グットマンの物語』 ローリー・アレクサンダー
パラリンピックは世界をかえる
ルートヴィヒ・グットマンの物語
ローリー・アレクサンダー 作
Lori Alexander
アラン・ドラモンド 絵
Allan Drummond
千葉茂樹(ちば しげき)訳
福音館書店
米国
パラリンピックを産んだ脳神経外科医・ルートヴィヒ・グットマンはドイツ生まれです。医師として働いていたのに、ユダヤ人だというだけで職場を追われ、ユダヤ人専門の病院で働いていました。しかしそこも安全な場所ではなかったので、彼はイギリスへ亡命しました。
イギリスへ行っても無名な医者であるグットマンは思ったような仕事をすることができませんでした。彼はここで脊髄損傷した患者たちがほとんど治療を受けることなく亡くなっていることを知りました。
それまでの脊髄損傷患者は、床ずれや膀胱の感染症で、入院してわずか1週間ほどで亡くなっていたのです。
床ずれ防止のために人力で寝返りを打たせること、尿が膀胱へ溜まらないように処置することなどの治療方法をグットマンは行い、ベッドに寝たままだった患者が起き上れるようにし、歩行訓練や車椅子の使用などを行ったのです。
第一次世界大戦後の脊髄損傷患者の80パーセントは亡くなっていたのに対して、ルートヴィヒの患者の死亡率はわずか11パーセントだった。(本文より)
患者たちが元気になっていくにつれ、これ以外に何かすることはないか?と考えたグットマンは患者たちを観察しました。すると、車椅子に乗った患者たちは手元にある道具を使ってポロのようなスポーツをしていたのです。
これだ!グットマンは、車椅子に乗った患者たちに「スポーツで楽しんでもらおう」ということに気づいたのです。
ここからパラリンピックへの道が生まれていきました。
最初は小さな会場から始まった車椅子スポーツの大会は、国際大会へと成長しました。でも、最初の頃は車椅子で飛行機に乗ることができず、荷物用のエレベーターを使ったこともあるそうです。
障がい者がスポーツを楽しむだけでなく、旅行や仕事で乗り物を使うための手段や道具も、少しずつ改善されてきたのです。
こういう歴史を知ることは、とても大事なことです。
病気や事故で身体が不自由になることもあるし、歳をとれば誰だって運動機能が衰えます。パラリンピックの選手たちは、そんなわたしたちに人間の可能性を教えてくれます。一生挑戦し続けることの大事さを教えてくれます。
パラリンピックのことを、もっと知ってください。
2413冊目(今年112冊目)
« 『降伏の時』 稲木誠 小暮聡子 | トップページ | 『努力不要論』 中野信子 »
「スポーツ」カテゴリの記事
- 『無敵のハンディキャップ』 北島行徳 25-98-3494(2025.04.11)
- 『補欠廃止論』 セルジオ越後 24-242-3268(2024.08.24)
- 『速攻管理学』 九重勝昭 146(2023.05.26)
- 『プロレス深夜特急』 TAJIRI 124(2023.05.04)
- 『Another REAL 車椅子バスケ日本代表はいかにして強くなったのか?』 チームリアル 286(2022.10.20)
「海外 その他」カテゴリの記事
- 『私的な書店』 チョン・ジヘ 25-106-3502(2025.04.19)
- 『戦場の秘密図書館』 マイク・トムソン 25-107-3503(2025.04.20)
- 『Usain Bolt』 Alex Raynham 25-95-3491(2025.04.08)
- 『幻覚の脳科学』 オリバー・サックス 25-108-3504(2025.04.21)
- 『思考の穴』 アン・ウーキョン 25-34-3430(2025.02.07)
「伝記・日記・ノンフィクション」カテゴリの記事
- 『チョンキンマンションのボスは知っている』 小川さやか 25-135-3531(2025.05.18)
- 『わたしは、あなたとわたしの区別がつかない』 藤田壮眞 25-94-3490(2025.04.07)
- 『無敵のハンディキャップ』 北島行徳 25-98-3494(2025.04.11)
- 『異なり記念日』 齋藤陽道 25-71-3467(2025.03.16)
- 『たまもの』 神藏美子 25-73-3469(2025.03.18)
コメント