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『2030年の東京』 河合雅司 牧野知弘

2030年の東京

河合雅司(かわい まさし)

牧野知弘(まきの ともひろ)

祥伝社新書

(河合)意外に思われるかもしれませんが、デジタル化が進むと、低スキルの仕事がむしろ増える可能性が出てきます。それは、AIや機械に置き換えられない仕事や、AI化するための投資額に比して人を使った方が割安な仕事です。
たとえば宅配業務の場合、集荷所まではAIを搭載した無人運転のトラックで運べても、商品を戸口に届ける業務や、冷蔵庫や洗濯機の備え付けおよび取り換えて不要となったものを引き取るといった業務は、人間でなければできません。(p61 仕事はこうなる)

 こういう仕事を担うのは誰なのか?ですよね。単純作業だから低賃金でということにしたいかもしれませんが、こういう仕事をしたいと思う人が少なかったら、そうはいきません。だからこそ、こういう仕事を担う新しい職業が生まれるのかもしれません。

 

(牧野)タワマンは建物ですから、必然として老朽化と向き合わなければなりません。マンションは築15~20年になると大規模修繕が発生します。この修繕費が曲者です。タワマンの場合、1990年代に建てられた初期のもので最近ようやく事例が出てきた段階ですが十数階建てマンションに比べて3~4倍の修繕費がかかります。
デベロッパーは通常、顧客に対して修繕積立金を月数千円から1万5000円程度と、安めに計上して提案します。割高感を抱かせないためで、これは不動産業界の常識です。この積立金は、築15年の最初の大規模修繕でほぼ使い切ってしまいます。すると修繕積立金が2万円くらいに上がるわけですが、タワマンの場合には管理費と合わせて5万円以上になることもあります。(p97 街、住まいはこうなる)

 相変わらずタワマンは人気ですけど、こういう事実を理解して買っている人は余りいないような気がします。地震や台風などで電気が止まったらどうなるのか?年金暮らしになっても管理費+修繕積立金を払っていけるのか?住み替えのためにこのマンションを売るときにどれだけの資産価値が残るのか?ちゃんと試算してみたら、怖くて手が出せないものなのかもしれません。

 それに、購入当時は充分に払えるはずだったのに、収入が減ったり、なくなったり、家族が病気になったりすることで支払いができなくなる可能性だってあります。その時にどうしようというシミュレーションをしている人、どれだけいるんだろう?って思います。

 

(河合)本気で考えるべきは「町のニーズ」すなわち住民は何を必要としているか、です。これまでの主たるニーズは通勤・通学であり、都心へのアクセスの良さが、鉄道会社にとって沿線住民を増やすための優位性でした。しかし、今後はそれだけでは生き残っていけません。むしろ、医療や介護サービスへのアクセスの良さといったことが評価されるようになるでしょう。近年は、1人暮らしが増えて救急車を呼ばざるを得ない高齢者が増えています。高齢者にとっては医療機関が近くにあることも重要なのですが、そこにどうたどり着くかということの方がさらに大事なポイントなのです。(p111 街、住まいはこうなる)

 コロナ過で在宅勤務が増え、毎日通勤する必要がなくなった人が増え、定期券購入が減りました。少子化で学生は減っています。

 増えているのは高齢者ですが、毎日電車に乗るわけではありません。毎日通うのはデイサービス、病院、食料品スーパー、散歩で公園。そういうものが徒歩圏内にあるのが理想的です。道路がフラットで、ベンチが適当にあって、杖をついても車椅子でも移動しやすい環境が揃っているところって、意外に少ないのです。

 

(河合)私が勧めているのが「スキルの交換」です。たとえば大工仕事が得意なおじいさんと裁縫が得意なおばあさんが近くに住んでいるとします。それぞれが得意とするスキルを交換する形で助け合えば、業者にお金を払わないですみます。こうしたスキル交換の仕組みを地域全体に根付かせておくことです。大概のことは、お金をかけずにできるようになりますから、このような暮らしの知恵を組み込んでいくことが、これからはとても重要となります。(p159 老後はこうなる)

 近所に知っている人が大勢いて、何かをお願いしやすい環境って、昔は当たり前にあったものなのだけど、今はそれが一番ぜいたくなことになってしまっているのですね。「遠くの親戚より近くの他人」が大事だってことを忘れてしまったから、孤独に苦しむ人が増えてしまったのが今という時代なのでしょうか。

 何でも自分でやらなければ!という思いが、どうしてこんなに世の中にはびこってしまったのでしょうね。高齢化社会は自分ひとりではどうにもならないことだらけなのに。

 みんなで助け合って生きる、それが当たり前の社会に日本は戻れるのでしょうか。

2407冊目(今年106冊目)

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