『地政学でわかるわたしたちの世界 12の地図が語る国際情勢』 ティム・マーシャル グレース・イーストン ジェシカ・スミス
地政学でわかるわたしたちの世界 12の地図が語る国際情勢
Prisoners of Geography: Our World Explained in 12 Simple Maps
ティム・マーシャル 作
Tim Marshall
グレース・イーストン 絵
Grace Easton
ジェシカ・スミス 絵
Jessica Smith
大山泉(おおやま いずみ)訳
評論社
英国人間はなぜ戦争をするの? どうしてほかの土地をほしがるの? 豊かな国とまずしい国があるのはなぜ? 世界の歴史に、地形がさまざまな影響を与えてきたことがわかる画期的な絵本。12の地図から国際情勢を考える。(書籍紹介より)
日本は海に囲まれた国なので、国境を意識することは余りありません。しかし、ヨーロッパのように他の国と地続きである場合、隣の国との関係によって国境の緊張度が高い場所もたくさんあります。
なぜロシアがウクライナに攻め込んでいるのか?の原因を考えるのに、地政学的な考察はとても大事なのです。
長年の間、ロシアは、自国海軍の一部をウクライナのクリミアにあるセバストポリ港に置いていました。セバストポリ港は黒海に面する氷結しない港で、ここからは地中海を経由して大西洋へと航行することが可能です。
この取り決めはロシアとウクライナが友好関係にあったからできたことでした。
しかしながら、2014年、ウクライナが欧州連合(EU)との協定に署名することを望んだため、ウクライナとロシアとの関係が悪くなりました。ロシアは、セバストポリ港に置いていた海軍の力を背景に、クリミアを支配下におさめて、自国でただひとつの氷結しない港を確保しました。(本文より)
これがあの戦争の発端なのだということがよくわかりました。そして、そんなロシアが隣国だからこそウクライナはEUに加盟したいと考えたのだし、それをロシアが阻止したいと考えたのです。
それにしても、冬に凍結しない港がここしかないとはね。調べてみると、日本に一番近いウラジオストク港でも冬には流氷で活動が制限されるので、セバストポリ港を死守したい、ひいてはウクライナをロシアのものにしたいという思考になるのです。
トルコはロシアとは敵対したことがない国です。でも、この位置関係ですからとても難しい場所なのです。黒海へ出たロシア軍の船はトルコのボスポラス海峡を通らないと地中海に出ることができません。NATOに加盟しているトルコに対してロシアはかなり気を使わなければなりません。ですからトルコから和平協議の話が出たときに、ロシアは無下に断ることはできないのです。
アメリカはなぜ、あんなにも強い国になったのか。イギリスは島国だからこそヨーロッパの脅威を直接受けずに済んで大国になれた。中国はどうして海洋進出を盛んに行うようになったのか。世界で起きている紛争の原因はどこにあるのかが一目でわかるのです。
この本は子供向けですけれど、大人の皆さん絶対に読んでください。世界のことがとてもよく分かります!
この本の原題を調べてみたら、「Prisoners of Geography: Our World Explained in 12 Simple Maps」だということにショックを受けています。「地理的状況に囚われた人たち」これは他人ごとではなく、自分のことも含まれているのです。
#地政学でわかるわたしたちの世界 #NetGalleyJP
2391冊目(今年90冊目)
« 『しらべるちがいのずかん』 おかべたかし やまでたかし | トップページ | 『動物会議』 エーリヒ・ケストナー »
「海外 その他」カテゴリの記事
- 『台湾の少年 4 民主化の時代へ』 游珮芸、周見信 24-339-3365(2024.11.29)
- 『台湾の少年 3 戒厳令下の編集者』 游珮芸、周見信 24-331-3357(2024.11.21)
- 『台湾の少年 2 収容所島の十年』 游珮芸、周見信 24-323-3349 (2024.11.13)
- 『台湾の少年 1 統治時代生まれ』 游珮芸、周見信 24-316-3342(2024.11.06)
「NetGalleyJP」カテゴリの記事
- 『夜の金糸雀 おくり絵師』 森明日香 24-353-3379(2024.12.13)
- 『新書へのとびら 第1部 現代新書はいかにして現代新書になったのか』 魚住昭 24-347-3373(2024.12.07)
- 『朝読みのライスおばさん』 長江優子 みずうちさとみ 24-336-3362(2024.11.26)
- 『がいとうのひっこし』 山田彩央里 、山田和明 24-318-3344(2024.11.08)
« 『しらべるちがいのずかん』 おかべたかし やまでたかし | トップページ | 『動物会議』 エーリヒ・ケストナー »
コメント