『安いニッポン 「価格」が示す停滞』 中藤玲
給与の壁が、人材獲得のネックとなる p111
かつて日本は先進国でした。IT関連の仕事はインドから、介護や工場労働などはアジアや南米からの労働者が大勢やってきました。ですから、団地には大勢の外国人が住むようになり、学校ではそういった家庭の子どもたちが増えました。
気がついたら日本は所得が低い国になっていました。より高い賃金を求める外国人たちは日本以外の国を目指すはずです。安い日本に来たいのは観光客だけです。
日本にいても海外での収入を得ることができるなら、物価も安いし、治安もいい日本で暮らそうという人はいます。ですから、都内の不動産物件は外国人がかなり買い込んでいます。日本人にとっては高額でも、彼らにとっては「割安感」があるのです。
外国人からすると、会社に業務内容や勤務先を委ねる日本式のメンバーシップ型雇用は理解できない。欧米だけでなくアジアも含め、外交人は「自分のキャリアは自分で築く」のが主流、そんな彼らにとって、せっかく専門分野に磨きをかけてきたのに「来春からは別の部署ね」、あるいは都内に一軒家を買って家族計画をしていたのに「来月から北海道に転勤ね」と言われるような日本で働こうとは思えないのだ。p146
会社の都合で自分の人生設計を壊されたりするのは嫌だし、会社第一という考え方をしない日本人だって増えています。会社の肩書だけで生きてきた過去の価値観で生きている人や会社は、もう時代遅れなのだということに気づくべき時が来ています。
「賃金が安くても、物価が安ければ生活できる。それの何が悪いのだ」と思う人もいるだろう。p227
日本はこの30年間、鎖国を行っていたようなものです。気がついたら「安いニッポン」になっていたのです。このままでは、日本は外国資本に買いつくされてしまうと警鐘を鳴らしていた人もいましたが、そんなことに気づかない人の方が大多数でした。
ところが、「コロナ過」と「ロシアのウクライナ侵攻」によって、そんなことを言っている場合ではなくなったのです。日本だけで生きていけるわけがないということが、ようやく実感を持ってわかるようになったのです。
コロナ過はそのうちに収まっていくでしょうけど、「安いニッポン」という現実は残り続けます。だって、物価が上がったら、それ以上に賃金も上げなかったら生活は成り立って行かないんですから。いまだに能天気な話しかできない政府のことを考えると、海外脱出を考える人が増えるんじゃないかしら。
そして近い未来に、日本人が海外へ出稼ぎへ行く時代がくるのかもしれないなぁって思うのです。
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