『はみだす緑 黄昏の路上園芸』 村田あやこ
路上に広がる植木鉢やコンテナでの園芸に、村田さんは興味を持ってしまいました。自分の家の前に植木鉢を並べる人だけではありません。家中にツタやブドウの蔓が張っていたりして、巨大な緑の壁になっている家もあります。街路樹の隙間になぜか植木鉢の木が混ざっていたりすることもあります。
さらに驚くべきは隙間があればどんどん増えていく植物の生命力です。アスファルトの隙間でも、排水溝の隙間でも、どこから飛んできたのかわからないけれど、植物が芽を出し、花を咲かせ、また種を作り、どんどん増殖していくのです。
わたしは下町に住んでいますから、この本で紹介されているような風景を毎日見ています。まだ寒いころからクロッカスの花が咲き、今はヒメジョオンやビオラがあちらこちらで咲いています。タンポポも咲き始めました。アジサイのツボミはまだ緑色です。
道端に咲く花や、どなたかの家の前の園芸作品を眺めながら、季節の変化を楽しんでいると、感染症や不景気や戦争なんかに一喜一憂している人間なんて、しょうもないものだなぁって思えてきます。
誰のために咲いているわけじゃないけど、誰かの心に幸せの灯をともせるかもしれない一輪の花。それに気づけるわたしでいたいと思います。
2425冊目(今年124冊目)
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