『美貌のひと』 中野京子
美しい人を描いた絵画はたくさんあります。画家が美しいと思った人をモデルにして描いた場合は、本当に美しい人だったのでしょうが、王様や貴族から肖像画を頼まれた場合は、元とはかなり違う美しい人が描かれている場合が多かったというのは、そりゃそうだよなと思うのです。
現代の人たちが、ポートレート写真を修整したり、プリクラで「おめめパッチリ」や「小顔」にしたり、そういう欲求と言うのはいつの時代にもあるものです。
美しい人は、その美しさで地位や名誉を得られると思われがちですけど、意外とそうではないことが多いようです。政略結婚や、金銭がらみの結婚が多かった時代、いくら美しくても貧しい生まれの人は愛人どまり。かつてのヨーロッパでは、絵のモデルの地位は低く、娼婦より下だったというのには驚いてしまいます。
マリー・ローランサンが描いたココ・シャネルの肖像画を、シャネルが「似てない」とはねつけたというエピソードは面白いです。ローランサンが描く淡い色合いの女性は、確かにシャネルのイメージからかけ離れています。孤児院から成り上がっていったシャネルのバイタリティが全く感じられません。ローランサンの「あんたみたいな田舎娘を書いてやったんだから」という上から目線も嫌だったんでしょうね。
美しい人の絵には、様々な物語が隠れていて面白いです。
2470冊目(今年169冊目)
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