『昨日』 アゴタ・クリストフ
トビアスは自分の母親のことをどう言われても、その通りだからしょうがないと諦めていました。でも父親のことは一生黙っていましたた。それだけは誰にも言ってはいけないことだと思っていたのでしょう。
母親のところから逃げ出した後、親は死んでしまって孤児であると、ずっと嘘をつき続けました。本当の名前も決して言わず、偽の名前で暮らしてきました。
異国へ渡り、時計工場で働くようになりました。同じ仕事の繰り返しにうんざりしながらも、淡々と生きるしかないといろんなことを諦めていたのに、偶然、小学校で隣の席に座っていたリーヌと再開してから、急に気持ちが変わったのです。
トビアスはリーヌのことを本当に愛していたのだろうか?
それはよくわかりません。
たった一人で異国で生きてきたトビアスは、リーヌに何を求めたのでしょう?
トビアスは、誰かと暮らすことはできても、胸の内にしまい込んだ秘密は明かせずに生きて行ったのでしょうか。
どこで生きようと、彼の苦悩は消えることがないということを強く感じたのです。
2452冊目(今年151冊目)
« 『書店主フィクリーのものがたり』 ガブリエル・ゼヴィン | トップページ | 『教養としてのヤクザ』 溝口敦 鈴木智彦 »
「海外 小説」カテゴリの記事
- 『絵物語 動物農場』 ジョージ・オーウェル 290(2023.10.18)
- 『The Elephant Man』 Tim Vicary 269(2023.09.27)
- 『アーモンド』 ソン・ウォンピョン 153(2023.06.02)
- 『寝煙草の危険』 マリアーナ・エンリケス 139(2023.05.19)
- 『ある一生』 ローベルト・ゼーターラー 128(2023.05.08)
« 『書店主フィクリーのものがたり』 ガブリエル・ゼヴィン | トップページ | 『教養としてのヤクザ』 溝口敦 鈴木智彦 »
コメント