『エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人』 S・J・ベネット 芹澤恵 訳
ウィンザー城で行われた晩餐会の次の日、ロシア人ピアニストがクローゼットで死んでいるのが見つかったところから物語が始まります。自殺のように見せかけられていましたが、明らかに他殺でした。世間には心臓麻痺という発表をし、警察とMI5は調査を秘密裏に始めたのです。
この事件が起きた2016年当時、ロシアの富裕層(オルガルヒ)がロンドンに大勢やってきて、多額の献金によって居住権や、その後の永住権取得が可能となったのです。彼らの「ロシアマネー」がロンドンの不動産を高騰させ、オルガルヒの子息たちは名門私立校で学び、イングランド・プレミアリーグのチームのオーナにもなっていたのです。そんな状況は「ロンドングラード」と揶揄されるほどだったのです。
被害者がロシア人だったため、ロシアのスパイの犯行じゃないかという説が有力でした。いやいや、一帯一路(中国)の仕業だという人もいます。英国の中心でそんなことが起きていいのか!
女王陛下はこの事件にとても興味を持っていらっしゃいました。MI5の報告を聞いていても、どうも腑に落ちないことばかりで、これは自ら調べてみるしかないと思われたのでしょう。秘書官補のロージーに様々な指示を与え、調査が開始されたのです。
フィリップ殿下との仲の良い会話や、ウィンザー城でのホース・レースの光景など、いかにも英国らしい風景の描写がいいですねぇ。そして女王陛下のチャーミングさが様々なシーンで登場しています。90歳の女王に報告する役人たちが無駄に丁寧な説明をしようとするのを聞いて「その程度のことは、すでに知っています」であっても、にこやかに聞き流し、報告しそこなっている部分はきちっと質問したりして、君主というのも大変だなぁって思わせてくれます。
若いロージーのことは、彼女の率直さと行動力を気に入ってくださったようです。あなたがいてくれて、とても助かるわという気持ちの伝え方も上手で、これぞ上司の鑑ですね。
何だか女王陛下がとても身近な存在に感じられるようになってしまいました。
「やんごとなき読者」も女王陛下が主人公だったけど、こんなにも国民から愛されているって素晴らしいなぁって思います。
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