『シュガータイム』 小川洋子 205
わたしは大学生で、それなりに頑張って勉強をしています。ホテルでのウェイトレスのバイトもそつなくこなしているし、付き合っている男性もいて、友人にも恵まれています。どこにもいるような女子大学生なのに、一つだけ変なところがあるんです。とにかく食べ物が気になってしょうがなくて、気がついたら何か食べている、でも太るわけでもない。食べ過ぎて気持ち悪くなるわけでもないんです。
自分は過食症なのかと思って、食べたものの記録を日記に書くことにしました。そして毎日、食べ物の名前がたくさん日記に残されていくのです。
彼女は幼いころに母親を亡くして、しばらくは父親と2人暮らしだったけれど、2番目の母親が弟を連れてやって来たあたりから、素直なだけの子どもではなくなったような気がします。弟のことは大好きだけど、母親には微妙な違和感を持っています。嫌いってわけじゃないけど、一緒にいると会話に困るというか、気持ちがイガイガしてしまうような、変な気持ちが湧いてくるんです。
小川さんが描く世界は静かだけれど、決して穏やかではありません。不思議なことがいろいろと起きてくるのです。
淡白な付き合いしかできない彼に対する、彼女の心の飢えが拒食症を招いているのでしょうか?
答えは何も出ないけど、時間がすべての問題を解決してくれるのでしょうか。
ところで、大人になっても背が伸びない弟は「猫を抱いて象と泳ぐ」のあの少年の原型なのでしょうか?
2506冊目(今年205冊目)
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