『世間とズレちゃうのはしょうがない』 養老孟司 伊集院光 204
「世間からズレる」をテーマに対談を重ねることとなり、今度は先生と僕の「ズレ感」の違いが明確になってきました。僕は「風体ほかの影響でどうしても世間とズレてしまうことに怯えながら、どうにか修正を試みるも、どうにもならず結果大幅にズレたままだが、今はなんとか調整しつつ生きている」。先生は、とっくの昔に「自分が世間とズレていることは分かっている。しょうがないと開き直って、開いた距離感で世間を冷静に見つめている」。この差は大きいです。(はじめに より)
「100分de名著」の出演依頼が来たときに、「分からないという立場でよかったらやらせていただきます」と言ってやらせてもらったんです。このスタンスがそれなりに好評なんです。それはNHKのアナウンサーさんが、立場上なかなか「分からない」と言えないから。でも僕は「ちょっと待ってください、今のもう全然分んないです」と言える。
~中略~
これって、「世間とのズレ」にも通じる話ですね。世間とズレていることに対して「僕、ズレていると思います」と言うことで、そのズレがある程度修正されることがある。世間とのズレを認識している時点で、実はある程度世間を把握しているわけだから、「こいつ、完全にわけが分かってないわけじゃないな」と世間側も理解してくれます。ズレていることを認めることは、一つの武器になるんじゃないかな。
ずれている自覚がないままズレていたり、ズレていないふりをし続ける方が、苦痛だし危険かもしれないですね。(p58)
世間の人たちって、何故だか横並びが好きなんですよね。「普通知っているでしょ」とか「知らないと恥ずかしい」とか、この場ではこっちと言っておいた方がいいと空気を読んだり、そんなはずはない常識に合わせろという同調圧力に潰されてしまう人が多いって、バカバカしいことなのにね。
伊集院さんのように、「それ、分かりません」って誰かが声を上げてくれたら、「自分もそうだから助かった」って思う人がきっと大勢いるのよね。分からないということは決して自分を卑下することではなくて、単に「今までの人生でそういうことに出会うことがなかったので、分からないんです」とか、「言葉だけは知っていても詳しい意味は知らないんです」ということなんです。だからこそ「分かりません」とストレート言えば、相手はきっと分かりやすく説明してくれるはずです。
もし、そこでちゃんと説明してくれないとしたら、その人も分かっていないということの証なんだから、「あっ、この人も分からずにこの言葉を使っていたんだ」って思えばいいんです(笑)
養老先生と伊集院さんの世間とのズレ方は、それぞれに違っていて、対処方法が全く違う所が面白いです。2人の間にもズレはあるんだけど、それをお互いに面白がっているから気にならないんです。
人はそれぞれに得意なことがあって、不得意なことがあって、好きなことがあって、嫌いなことがあるのは当たり前です。その違いを嫌だと思ってしまうのはいったい何なのでしょうね。「自分の話題に付いてこられない奴が悪い」とか、「自分に分からないネタを振る奴が悪い」とか、そういう思考の人って悲しいなと思います。でも、そういう人が大勢いるよねぇ(-_-;)
この本のことは、ピーター・バラカンさんのラジオ番組「The Lifestyle Museum 7/15」に伊集院さんが出演されて、養老先生との対談が面白かったという話をされていたので知りました。 番組は https://www.youtube.com/watch?v=wdbEEN_V9Mg で視聴することができます。
みんなちがって、みんないい
そういう気持ちをみんなが持てたら、世界はもっと平和で生きやすいものになるのになぁ!
2505冊目(今年204冊目)
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