『失われゆく仕事の図鑑』 永井良和 高野光平 223
その時代には必要とされた仕事が、ある時からすたれていってしまうのに気がついて、ああ残念だなぁと思ったり、そりゃそうだよなぁと思ったり、様々な記憶が呼び起されてくるのです。
わたしが子供の頃に住んでいた場所は、近くに飲み屋さんがたくさんあったので、氷屋さんが毎日来ていました。家の冷蔵庫も、最初のは上の段に氷を入れる「氷冷蔵庫」だったので、氷屋さんから氷を買っていました。
七輪で使う練炭や豆炭を買う人が多かったから、商店街には炭屋さんが必ずありました。家の外で七輪で魚を焼いていた家が多かったし、冬に寝る時に足を温める「豆炭あんか」を使っている家もたくさんありました。小学校の暖房もコークスを燃やすストーブだったなぁ
あのころ、「お鍋に、やかんに、蝙蝠傘」という声をかけながら月に1回くらい鋳掛屋さんが歩いていました。鍋の底に小さな穴が開いた程度の簡単なものなら、道端でトントンと直してくれたし、時間がかかるものは預かっていって、数日後に持ってきてくれました。とてもいい声の掛け声だったので、声が聞こえてくると「あっ、直し屋のおじさんだ~」って思わず外を眺めたものです。
今はもうなくなってしまった物の写真を見ていて、おお~と思ったのは「お湯が出るカップヌードルの自販機」です。これと同じものが、わたしが通っていた専門学校の食堂にあったんです。カップヌードル自体はどこのスーパーでも買えたけど、お湯が出てすぐに食べられるという場所はなかったんです。だから、この自販機は画期的だなぁって思ったんです。
わたし暮らしている下町には、この本に登場している「絶滅危惧される店」のうち、「荒物屋」「味噌屋」「炭屋」「レコード屋」などがギリギリ残っています。でも、「野菜の行商のおばさん」や「三助さん」はいなくなりましたねぇ。だけど「サンドイッチマン」は駅前にいますよ。
「御用聞き」とか「蕎麦屋の出前」は形を変えて今でも残っているし、この本に載っているような職業というのは、一度なくなったからこそまた復活する可能性があるものも、あるんじゃないかしら。何でもかんでも自動で片付いてしまう世の中だからこそ、人のぬくもりを求めることもあるのだと思うのです。
2524冊目(今年223冊目)
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