『東京日記 4 不良になりました。』 川上弘美 215
九月某日 晴
アカハライモリのオスが出すフェロモンの名前は「ソデフリン」という。
”あかねさす紫野行き標野(しめの)行き野守は見ずや君が袖振る”
という、額田王(ぬかたのおおきみ)のつくった和歌由来の命名だそうである。
それから、奈良地方のアカハライモリの変種のオスのフェロモンは「アオニリン」。
”あをによし奈良の都は咲く花のにほうがごとく今盛りなり”
という、小野老(おののおゆ)のつくった和歌由来の命名である。
心の穴を埋めるため、「ソデフリン」や「アオニリン」を分泌するアカハライモリのオスらのことを、ずっと考え続ける。
だいぶん、回復する。
どうやらわたしの心の穴は、爬虫類、両生類、昆虫、などによって埋めることができる模様。いったいいつから、こういう体質になったのだろうか・・・。(p134)
この日記が書かれた時期、東日本大震災があったり、引越ししたり、入院したり、仕事で海外へ行ったり、様々なストレスにさらされた川上さんですけど、どんなことがあっても立ち直れるのは、こんなことを考えているからっていう所が面白いんです。
散歩で出会ったイグアナさんの名前を想像したり、待合室でそばに座っていた人の話に聞き耳を立てたり、電車の中で見かけた知人が読んでいた本が「部長 島耕作」だということを発見してしまったり、日常の中に面白いことがたくさんあるんです。
東京日記の五分の四は本当のことだって川上さんは言ってます。ということは、変なことの方が現実で、普通そうに思えることの方がウソなのかな?って思えてくるのです。イグアナを頭に乗せて歩いている人には、わたしも会ってみたいと思います。
ウサギにリードをつけて散歩をしている人や、オウムを肩に乗せてジョギングしている人(この人は友人です)を見たことがあるわたしとしては、イグアナを頭に乗せて歩いている人にぜひ会ってみたいと思います。そして、こういう飼い主さんがもっと大勢いるはずだから、もっとであってみたいと思います。
2516冊目(今年215冊目)
« 『沢村さん家のこんな毎日 平均年令60歳』 益田ミリ 214 | トップページ | 『D坂の殺人事件』 江戸川乱歩 216 »
「日本の作家 か行」カテゴリの記事
- 『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』 工藤美代子 26-3-3762(2026.01.04)
- 『なぜ日本文学は英米で人気があるのか』 鴻巣友季子 26-1-3760(2026.01.02)
- 『パリのすてきなおじさん』 金井真紀、広岡裕児 25-360-3756(2025.12.28)
- 『トラジェクトリー』 グレゴリー・ケズナジャット 25-321-3717(2025.11.19)
- 『河北新報のいちばん長い日』 河北新報社 25-337-3733(2025.12.05)
« 『沢村さん家のこんな毎日 平均年令60歳』 益田ミリ 214 | トップページ | 『D坂の殺人事件』 江戸川乱歩 216 »



コメント