『ヤマザキマリ対談集 ディアロゴス Dialogos』 集英社 267
中野 東アジア人には、ドーパミンが出てもすぐになくなってしまう人が多くて、あまり自分では考えたくない傾向になるようなんです。一方、ヨーロッパ人にはドーパミンが分解されずに残る人が多く、こういうタイプは自分で考えるのにそんなに抵抗がない。
ヤマザキ そうすると、アジア系の人間は、自分ではあれこれ決めたくないということですね。
中野 そうみたいなんです。そうなると、何かをやるときには誰か最初にやった人についていくようになるということです。(本文より)
自分で考えずに集団についていく人が多い日本人の特性は、こういう所に源を発しているのでしょうか。これが同調圧力や、空気を読むということを生み出しているのだとしたら、これを無くしていくのは大変なことなのだなと改めてわかりました。
パトリック・ハーラン 日本で知られている外国人のトップアスリートはサッカー選手と、あとウサイン・ボルトぐらいしか思い浮かばないあですね。自国民に注目しすぎて世界のすごさに気づいていないのはもったいないなと思います。自国を応援しながら世界のトップがいかにすごいかというところにも目を開いてもらいたいですね。
これは、わたしも残念だと思っていることです。日本人アスリートを応援したいのはわかるけど、それだけっていうのはおかしいなと思います。日本が予選敗退したとしても、その種目の決勝戦に興味を示さないって変だなと思うんです。MLBだって特定の選手を追っているだけで、その人が所属しているチームについて興味が薄い報道しかしない日本のメディアって、どうにも変だなぁって感じます。
もうすぐサッカーのワールドカップが開催されますけど、日本を応援するだけでなく、世界の素晴らしいプレイヤーの活躍に目を見張るという観戦の仕方をみんながしてくれるようになればいいなぁと思います。
ヤマザキ (コロナウイルスで人間が活動しなくなって)イタリアにも自然が戻ってきて、ヴェネチアの運河の水がすっかりきれいになりましたし、観光客がいなくなったローマのスペイン広場の噴水では今、カモが泳いでいます。
そういう光景を見聞きすると、実は人間が地球にとってのウイルスだったんだなぁ、と思ってしまいます。
地球にとって一番迷惑なことをしているのが人間なんだということが、コロナ禍のおかげで良くわかるようになりました。人間が活動をやめれば空も海も澄み、余計な二酸化炭素の排出もなくなります。
そして、世界のエネルギーや食糧の問題が、すべて人間が巻き起こしていることなんだということも、はっきりしてきました。
この11名との対談は、それぞれ違った切り口ではあるけれど、どの人とも「この人と話をしたかったんだ!」という思いが溢れているところがすてきでした。
そして、兼高かおるさんへの憧れがヤマザキマリを生んだのだと確信できた対談がとても印象的でした。
第1回 養老孟司 世界は予測不能、だからおもしろい
第2回 竹内まりや 私たち表現者はアスリートである
第3回 中野信子 脳科学が解き明かす運動と人間の秘密
第4回 釈徹宗 過剰な欲望をコントロールする身体のスキルとは
第5回 棚橋弘至 「善く生きる」ためにプロレスを観よう
第6回 パトリック・ハーラン なぜ人間はハイになることが必要なのか
第7回 中村勘九郎 生身の感動がもたらす爽快感
第8回 平田オリザ アフターオリンピックの日本が向かう先は
第9回 萩尾望都 今、この世界を鎮めるために
第10回 内田樹 成熟しなければ生き延びられない
特別編 兼高かおる 旅は地球とのランデブー
2568冊目(今年267冊目)
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