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『無理ゲー社会』 橘玲 247

無理ゲー社会

橘玲(たちばな あきら)

小学館新書

きらびやかな世界のなかで、「社会的・経済的に成功し、評判と性愛を獲得する」という困難なゲーム(無理ゲー)をたった一人で攻略しなければならない。これが「自分らしく生きる」リベラルな社会のルールだ(あとがき より)

アメリカには、ロッキー山脈に沿って南のアリゾナから北のアラスカまで走る「自殺ベルト」がある。自殺率が最も高いのはモンタナ、アラスカ、ワイオミング、ニューメキシコ、アイダホ、ユタで、もっとも低い6州はニューヨーク、ニュージャージー、マサチューセッツ、メリーランド、カリフォルニア、コネティカットの教育水準が高い東部、西海岸諸州だ。ここでも、大卒/非大卒の学歴の違いが顕著に表れている。

学歴が低い男性は以前からアルコール、薬物、自殺で死ぬ可能性が高かったが、その割合は時代とともに高まり、1992年と比べると絶望死は3倍にもなった。一般に女は男より自殺率が低いが、絶望死の特徴は、非大卒の女の死亡率も(男よりも低いものの)やはり上昇していることだ。(p131)

 教育の差とは経済の差であり、富めるものは更に富み、貧しいものは更に貧しくなるという傾向が益々広がっているのです。この低所得者の心を掴んだのがトランプ元大統領だったのです。議会襲撃という大事件を起こしても、トランプ支持者は減りません。それは分断してしまった米国社会にトランプを支持したくなる要素がありすぎるからなのです。

 

非正規の不安定な仕事で収入が少なく、満足に貯蓄もできない。定年になっても微々たる年金しか受給できそうもない。それにもかかわらず親の介護をしなければならず、結婚もしなければ子どももいない自分たちには「孤独死」が待っているだけだーー。こうして、合理的な結論として、「苦しまずに自殺する権利」を求めるのだろう。(p214)

 高齢者が増え、年金は彼らが使い果たしてしまうだろう。自分たちの老後に年金があるかどうかもわからない。それに現在の自分は充分な収入を得ることすらできていない。そんな気持ちを、老人が支配している政府は理解できていない。年金をちゃんともらっていても孤独死してしまう高齢者が増えている現実を見せつけられて、自分の未来を憂いてしまう人が増えても不思議はありません。

 

日本の母子家庭のもうひとつの特徴は、就労率がきわめて高いことだ。母子家庭の81.8%が就業しており、これは女性が働くのが当たり前のデンマークやスウェーデンより高く、先進国で最高だ(アメリカやドイツは70%弱、イギリスは50%)
なぜこのようなことになるかと言うと、日本では就労可能性(働く能力)がある場合は生活保護の受給資格がないからで、身体的・精神的障害などによって働けないと認定されたもの以外は福祉事務所の就労指導の対象になる。その一方で、彼女たちの約半数が「パート・アルバイト等」の非正規の仕事をしており、正社員と非正規の「身分差別」によって劣悪な労働環境を強いられ、低収入の生活を余儀なくされている。

母子家庭になるのは離婚したからで、貧困に陥るのは別れた夫(父親)が養育費を払わないからだ。責任は男にあるが、なぜか日本では、最近まで養育費の不払いはほとんど問題にならず、母子家庭の生活保護不正受給だけがバッシングされている。
こうした日本社会の現状を見れば、若い女性が「結婚して子供を産んでもなにひとついいことがない」と思っても無理はない。

~中略~


子供ができてから離婚すると、父親は責任を問われることが(ほとんど)なく、母親だけが社会の最底辺に突き落とされる「自己責任」にされてしまう。少子化で大騒ぎしている日本社会は、「子供を産むな」という強烈なメッセージを送っているのだ。(p242)

 これが日本の現実です。少子化をどうのこうのと言う前に、今生きている人を大事にしなかったら、次の世代は生まれてきません。低所得の家庭が増えるということは、教育を受ける機会が減るということです。奨学金で進学したとしても、社会に出たとたんに借金を背負ったスタートになるということで、やっぱりお金の問題はついて回るのです。

 ホントに気持ちが病んでしまうな話ばかりでイヤになってしまう今の日本。もはや先進国でもないのに「技術立国」とか「ODA(政府開発援助)」とか、カッコいいことばっかり言っている日本と言う国は、いったい誰のために存在している国なのでしょうか?

2548冊目(今年247冊目)

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