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『女に生まれてモヤってる』 ジェーン・スー 中野信子 243

女に生まれてモヤってる

ジェーン・スー

中野信子(なかの のぶこ)

小学館

 女に生まれて損したなぁって思うことはいろいろあります。子どものころから「女の子なんだから」と言われ、大きくなっても「女なんだから」と言われ、女ってどうしてそんなことを言われ続けなければならないんだろうってモヤモヤし続けてきました。

 そんなわたしの人生で、これが一番モヤったなと思うのは、最初に勤めた会社で年齢による昇給の表を見た時でした。その会社の給料は職能給+年齢給という考え方だったのですが、女性の年齢給は29歳までしかなかったのです。そのあとはいくつになっても同じまま。男性は定年になるまで上がっていくという規定でした。

 これを見てムッときた20代のわたしは総務部長に「男女で昇給に差があるのって労働基準法違反じゃないんですか?」と質問したんです。そうしたら、「ウチの会社ではね、女性は事務職で男性は営業職と職能が違うでしょ。だから職能の差で給料が違っているだけなんだよ。」という回答だったんです。「ちょっと待ってくださいよ!この会社は女子は事務職しか採っていないし、営業は男子しか採っていないじゃないですか。それに、わたしは事務職でも営業でもない企画系の仕事なんですけど、わたしの場合も営業じゃないということで30歳で年齢給頭打ちということなんですか?」「そうです」この瞬間、わたしはこの会社を29歳で辞めようと決意したのでした。

 その後も、いろんなところでいろんな目に遭いましたけど。女だということで得をしたと思えたのは電話サポートの仕事をしていたときに、ブラックな男の客に「上司を出せ!」と言われた時くらいですね。

 ホントは上司じゃない若い男性と電話を変わっただけで相手の態度が変わるんですよ。それにはマイッタなというか、バカじゃないの?と呆れてました。

 

 女だということだけで不利益があるということが、ホントに世の中にはたくさんあります。「女だからできない」「女がそんなことをやったことがない」そういう風に思い込んでいるのは男だけでなく、女もそう思い込んでいるという所が根が深いなと思います。

 

 シングルマザーの貧困という問題だって、本来は本人の問題ではなくて、養育費をちゃんと払わない元夫がいたり(刑事罰がない)、非正規の仕事にしか就けないという社会の問題なのに、そういうことを無視して彼女たちに押し付けているだけだということを、男たちは理解できていないんだろうなぁって思います。

 今まで理事に女性がいなかった日本大学の理事長に林真理子さんが、連合の会長に芳野友子さんが就任しました。こういうことが珍しいと報道されること自体、日本が時代遅れだという象徴にも思えるのですが、様々なところで男女格差がなくなって欲しいと思います。

 

 ふと考えてみると、特殊詐欺(オレオレ詐欺)の電話って、ヘマをしでかした息子や孫の尻ぬぐいをしてくださいという内容が多いですよね。詐欺をする人までもが、そういう所をついてくるのかと思うと、これまたモヤってしまうのです。

 モヤってしまうことだらけの世の中が変わるのは、いつの日のことなのかしら?

2544冊目(今年243冊目)

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