『じい散歩』 藤野千夜 252
明石家は夫婦合わせてもうすぐ180歳になろうとしているのですが、息子は3人とも独身です。長男は10代から引きこもり、三男は事業に失敗して借金まみれで家に戻ってきました。自立しているの次男はトランスジェンダーで自称・長女と言っています。
新平さんは元建築業で、現在はほぼ隠居しているけれど健康オタクで毎日散歩とおいしいものを食べることを楽しみにしています。妻の英子さんはそんな新平さんが浮気をしているんじゃないかと毎日うるさくてしょうがありません。単に口うるさいだけかと思っていたのだけれど、最近は認知症なんじゃないかと新平さんは想像しています。
子どもたちは家事はしないし、家にお金を入れてもくれません。お母さんのグチは次男が女子力を発揮して聞いてくれることがある程度です。介護とかお墓の話には全く乗ってこないし、「あ~あ、もう期待しないよ」と新平さんは思っています。
その分、自分は好きなことをしていこうと決めたようです。毎日、気になる建築物を見に行ったり、おいしいものを食べたりしています。妻の介護は自分でやる覚悟をしているけれど、自分が介護施設に入るためのお金はきっちりキープしているみたいです。
これが日本の現実だ!という感じですね。両親がいくらしっかりしていても、最低限考えなければならないことがあるはずなのに、息子たちは思考停止しちゃってるんだなぁ。まぁ、最後はなるようにしかならないんだけど、これでいいのか?って思います。
深く考えると暗くなってしまうようなテーマなのにどこか明るいのは、新平さんがあまりこだわらない性格なのと、自称・長女が意外と気を使ってくれているところなのかなって思います。とはいえ、明石家の10年後はどうなってるのかなぁ?想像するのが怖いなぁと言う感じです。
うちの近所の50歳過ぎた息子と住んでいるお母さんから、似たようなことを聞いたことがあるなぁ。こういう家族って、実はあちこちにいるんじゃないかしら?
藤野千夜の既読作品
2553冊目(今年252冊目)
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