『仲野教授の笑う門には病なし!』 仲野徹 245
50年ほど前、私が高校生だった頃、里香は生物・化学・物理・地学のすべてが必修だった。最初から大学入試で選択するつもりのない地学などはあまり勉強しなかったけれど、それでも一応の知識は習得した。しかし今は違う。大学入試で選択しない科目を履修すらしなくていいシステムになっている。勉強と言うの大学入試のためだけにあるのではない。最低限の知識を与えることが重要なはずなのに、おかしなことだ。そんな状況でとりわけ気になるのは、医学部へ進学する学生の生物学に対する興味である。(p80)
仲野先生は生命科学者で、専門は「いろんな細胞がどうやってできてくるのだろうか」学と言う方です。だからこそ、生物の勉強をしないまま医学部へやってくる学生が多いことに危惧していらっしゃるのだと思います。「入試で点数を取りやすい物理、点数が取りにくい生物」という観点で生物を勉強していない学生が多いという現実は恐ろしいです。
最近は経済学部でも数学をちゃんと勉強しないで入学してしまう学生が多くて、大学で補習授業を行っているところもあるとか。日本の大学入試システムや、高校の履修範囲が変だよねってところがたくさんあるのですね。
「都構想」によって大阪は分断された。とよく言われます。しかし、私の周りは最初からほぼ全員が反対です。だから、すでに存在していた分断があらわになった。というのが正しいような気がしています。(なかののつぶやき p102)
僻地へいくと物価の感覚がわからないので、ぼられたかと思うことが結構あります。といっても、金額自体は全然たいしたことはありません。なので、まぁええわ、寄附したようなもんや、と解釈することにしています。(p123)
真面目なことも取り混ぜながら、基本は楽しいことで埋め尽くされたこのエッセイ集。義太夫のお稽古、キャンプ、食べ物などのお話は、へぇそこまでやっちゃうんだということが満載です。師匠である本庶佑先生にお世話になった話とか、海外へ行って感じたことなど、バラエティに富んだお話に「このおっちゃん、何でも楽しんでる」と思うことだらけなのです。
そして、他の人だったら気づかないようなことを見つけてしまう感性がステキだなと思うんです。電車の車内で変なことをしている人を見つけたり、「駅ピアノ」の日本と外国の差を感じたり、どんなものにも好奇心が働くっていいことですね。
娘さんが出産した時の騒動も、自分は何も助けられないけれどと言いながらドキドキしたり、感謝したり、泣いちゃったり、感情表現が豊かでとても共感してしまいました。こういう方だからこそ、良い研究をなさってきたのだろうなと想像できます。
面白い出来事や話に遭遇する頻度は、面白い人であろうがなかろうが、誰にとってもそう変わらないはずです。でも、エッセイを書き始めてから、明らかにその頻度が上昇しました。エッセイのネタにするため、世の中はおもろいはずだと信じる姿勢と、おもろそうな匂いがする方向に進む習慣を心がけたおかげだとしか考えられません。そういった意味では、エッセイを書く習慣と言うは人生を豊かにする優れた方法にちがいありません。(おわりに p188)
「世の中はおもしろいはずだと信じる姿勢」って大事ですねぇ。それがあるかどうかは、人生を大きく変えてしまうでしょうね。わたしもその姿勢をマネしていこうと思います。
お土産に買ってきたマニ車を回しながら世界平和を祈っているとおっしゃる先生は、ホントにステキな方です!
2546冊目(今年245冊目)
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