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『ぶたぶたカフェ』 矢崎存美 260

ぶたぶたカフェ

矢崎存美(やざき ありみ)

光文社文庫

 目黒泰隆さんは、ずっと「いい子」「優等生」であろうとしてきました。それは、子どもの頃に両親が離婚して母親と2人暮らしをしていたので、母親に心配をかけたくないという気持ちからでした。就職してからも、そんな気持ちのまま仕事をしていたら、ついに限界にぶつかってしまいました。夜寝られなくなり、ノイローゼになり、会社を辞めてしまったのです。

 友達がヒマだったらうちの店でバイトしない?と誘ってくれたのです。その店は夜だけ営業で、同じ店で朝と昼間は別の店が営業しています。朝から営業しているお店が評判のようで、気になっていました。お店が切り替わる時間帯に初めてそのお店のオーナーに会ってビックリ!なんと山崎ぶたぶたさんだったのです。

こいつには熱がなくてなあ。

 友達に言われたこの言葉が、泰隆さんの胸に刺さったのでしょうね。そう、自分は母親に心配をかけたくない、迷惑をかけたくない、そんなことばっかり考えて生きてきて、自分自身が何をしたいのかってことを考えたことなかったなぁって気がついたんです。

 ぶたぶたさんは、泰隆さんの胸の内をきちんと聞いてくれます。そして、そっと背中を押してくれるんです。

 泰隆さんの未来がパッと明るくなったような気がします。

2561冊目(今年260冊目)

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