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『約束された移動』 小川洋子 290

約束された移動

小川洋子(おがわ ようこ)

河出文庫

 小川さんの作品に登場する人たちは、みんな何かにとりつかれています。その対象はいろいろだけど、大好きな人や動物や物のことしか考えていないから、他人からは不思議な人だと思われています。そのために人生を捧げているとしか考えられないような人なのだけれど、本人は至って自然体で、それが大変なことだとは思っていないようなのです。

 

 「約束された移動」で、あのホテルの部屋に滞在したスターが持ちだした本のことを気づいたのは、きっと彼女だけ。その秘密を知っているということで彼女は幸せな気持ちを持ち続けられるから、ホテルの仕事を続けているのでしょう。

 「巨人の接待」で通訳として巨人の滞在期間中、ずっと随行した彼女も、巨人と自分だけの秘密が生まれたからこそ、今までにない幸せを感じることができたのです。

 

 誰にも言わない、誰にも知られたくない秘密が、その人の幸せを生んでいるのだとしたら、それはとてもステキなことです。だって、誰にも言えない、誰にも知られたくない秘密のために、不幸になっている人が、世の中には大勢いるんですから。

 この6編が収められています。

・約束された移動
・ダイアナとバーバラ
・元迷子係の黒目
・寄生
・黒子羊はどこへ
・巨人の接待

2591冊目(今年290冊目)

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