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    (by 本田宗一郎)

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『きのうのオレンジ』 藤岡陽子 273

きのうのオレンジ

藤岡陽子

集英社

一万円選書 の中の一冊

 遼賀が15歳の時、弟の恭平と山で遭難してしまった。吹雪の中をふたりで力を合わせて歩き、幸い下山できたけれど、その時の凍傷のせいで遼賀の足の指は白くなったまま。

 

 30代になった遼賀は胃の痛みを覚えて検査をしたところ「胃ガン」と宣告されてしまいました。不安な気持ちを抱えて入院、手術、療養、そんな毎日の中でなぜか思い出すのは遭難した時のこと。弟とふたりで書いた遺書のこと。怖いという気持ちよりも、生き延びなければという気持ちを持ち続けて頑張ったあの日のことを思えば、病気になんか負けないと信じることにしたのです。

 弟も、母も、同級生で看護師の泉も、職場の高那も、年老いた祖母も、みんな自分のことを一生懸命に考えてくれるから、一生懸命に生きて行こうとする遼賀だけど。

 

 元気でいたら、きっと考えもしなかっただろうことを、遼賀は色々と考えたのでしょうね。家族がいる幸せ、友達がいる幸せ、高校時代を懐かしいと思える幸せ。毎日仕事に追われて忘れていたことを、気づかせてくれたのが病気だったというのは、悲しいなぁ。

 でも、気づけて良かった。感謝できて良かった。いろんな話をできて良かった。そう思いたいです。

 

 3年前にガンで亡くなった友達のことを思い出しました。彼は宣告を受けてから、何でこんな病気になってしまったんだろう?あと何年生きられるんだろう?今のうちにやりたいことをやっておかないと。そんなことばかり考えていたと言っていました。薬の副作用で具合が悪くなっていくのが辛いけど、それより嫌なのは不安な気持ちを持ち続けなければならないことだと何度も言っていました。

 

 だから、この主人公のような最期を迎えられる人は、幸せなんだなって思いました。

 自分が死ぬときに「思い残したことはない」って思えるかしら。みんなに心から「ありがとう」って言えるかしら。

2574冊目(今年273冊目)

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