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『老人ホテル』 原田ひ香 285

老人ホテル

原田ひ香(はらだ ひか)

光文社

NetGalleyJP

 日村天使(ひむらえんじぇる)は、生活保護家庭で七人兄弟の末っ子として生まれました。両親も祖父母も働いているのを見たことがありません。子どもたちは高校を卒業したら家を出ることになっているけど、天使は16歳の時に、こんな家にいたくないという思いだけで飛び出してしまいました。でも、何ができるわけじゃない、ガールズバーやキャバクラで働いてなんとか生活してきたけれど、どうも自分には向いていないと思い辞めてしまったんです。

 彼女は今、大勢の老人が暮らすホテルで清掃の仕事をしています。昔勤めていたキャバクラが入っていたビルのオーナーだった光子という老婦人に会うために。

 

 天使は貧しい家庭で育って、勉強もできないし、キレイでもないし、人付き合いも得意じゃない自分のことを、ものすごくダメな人間だと思ってきたんです。でも、自分の親兄弟のような生活をしていてはダメだということだけはわかっていたんです。だから、光子さんからお金持ちになる何かを教わりたいと思ったんです。最初は「あんたにはムリ」という態度だった光子さんですけど、天使が本気だということがわかって、少しずつお金のことを教えてくれるようになりました。天使も、教わったことをしっかりと実行するようになり、生活が少しずつ変わっていきました。

 

 天使のような子って、自分は頭が悪いって、本人も周りも思っているようなんだけど、実際はそうじゃないんですよね。ちゃんと育てられてない。経験が足りない。大事にされてこなかった。要するに親や学校や、周りの人に恵まれなかっただけなんです。

 銀行口座の作り方も、自分のお金の使い方を見直すということも、金利のことも、税金のことも、社会保険も、ごはんの作り方も、箸の持ち方も、なにもかも、知らないまま大人になってしまっただけなんです。

 こういう人って、きっと大勢いるのでしょうね。わからないことだらけの世の中で、相談する相手もいなくて、自己評価は低いままで、それじゃ人生なんてつまらないとしか思えないだろうなぁ。

 

 原田ひ香さんは、実話を元にこの本を書かれたとのことですけど、これが日本の現実だ!と言う感じですね。天使は光子さんというメンターを見つけることができたけど、そういうこともなく、ズルズル生きて行くしかない人たちのことを考ええると悲しいです。

 ラストはあんな形になってしまったけど、天使にはしっかりとした人生を歩んで欲しいなと願っています。

#老人ホテル #NetGalleyJP

2586冊目(今年285冊目)

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