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『祝祭と予感』 恩田陸 297

祝祭と予感

恩田陸(おんだ りく)

幻冬舎文庫

 この作品は、蜜蜂と遠雷のスピンオフで、登場人物たちの個性がとてもよく表れている、とても楽しい短編が並んでいます。

 

祝祭と掃苔(そうたい)
 マサルと亜夜が恩師の墓参りに行こうと言ったら、なぜか風間塵がついてきました。やっぱり仲良しなんだな、この3人。


獅子と芍薬
 審査員として参加していた嵯峨三枝子とナサニエル・シルヴァーバーグが出会ったのは、彼らが10代の頃、コンクールのステージ上でした。

袈裟と鞦韆(ぶらんこ)
 あのコンクールの課題曲「春と修羅」の作曲者、菱沼が思い出すのは、実家のホップ農家を継ぐことになった小山内健次のこと。


縦琴と葦笛
 マサルがナサニエルに師事するために、ある作戦を実行したのです。

鈴蘭と階段
 ヴァイオリンからビオラに転向した奏は、自分のビオラを探しているのですが、どうもピンとくるものがないのです。


伝説と予感
 ホフマンは、知人の屋敷でピアノの音を聞いてビックリしたのです。そのピアノを弾いていたのは幼い少年、塵でした。

 なにかの技術を磨くには、それだけに専念すべきだという人がいます。いやいや、様々な経験が大事なのだという人もいます。教える人によって、教わる人によって、様々な考え方があるのだとは思いますけど、マサルのように、他の楽器や他のジャンルを演奏することもアリなはずです。そうすることによって音楽の幅が広がるのだと感じて師匠を変えたのは、正しい選択だなと思いました。

 ある域に達する人にとって、エゴを通すのは当然のこと。それを自然にできてしまうのが天才なのかなと思います。それにしても、ここに登場する人たちの自由なこと!みんな、とてもステキだなぁ。

2598冊目(今年297冊目)

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