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『銀の猫』 浅井まかて 291

銀の猫

浅井まかて(あさい まかて)

文春文庫

一万円選書 の中の一冊

長寿の町・江戸では七十、八十の年寄りはざら。憧れの隠居暮らしを満喫する者がいる一方、病や怪我をきっかけに長年寝付いたままの者も多く、介護に疲れ果てて嫁ももらえずに朽ち果てていく独り者もまた多い。誰もが楽になれる知恵を詰め込んだ「介抱指南」を作りたいと思い立った貸し本屋から協力ををもとめられたお咲。だがお咲の胸には、妾奉公を繰り返してきた母親への絶望感が居座っている。(書籍紹介より)

 老人や病人を介抱する人を派遣する口入屋「鳩屋」で一番人気の介抱人がお咲さんです。彼女は母親の借金を返すために、他の仕事よりも給金が高いこの仕事を続けています。

 彼女のような人を雇うことができるのは豊かな商家か武士の家に限られてしまうのですが、どの家にも様々な問題があるのです。

 江戸時代、親への孝行として、介抱(介護)の担い手は、その家の長男だったというのを初めて知りました。親の介抱のために早期退職することもあったというのは、意外な感じがします。

 そして「妾奉公」ということにビックリしてしまいました。「丁稚奉公」や「女中奉公」と同じように、妾と旦那の間にもお手当てや待遇の取り決めがあって、その契約書もあったというのです。

 介護する方とされる方、その意思疎通が上手くいかなくて喧嘩になったり、放っておかれたり、時にはDVになってしまったり、今も昔も難しい問題が色々とあります。

 お咲さんは、母親とは犬猿の仲です。普通の人なら嫌がるようなこの仕事を「あの人と家にいるよりまし」だと思っているせいか、そんなに嫌だとは思っていないようです。お世話をしているお年寄りたちに寄り添う中で、様々なことを学んでいきます。

 そして、何かあったときに必ず握りしめてしまうのは、離縁されてしまった嫁ぎ先のお義父さんにもらった「銀の猫」の根付です。これをお守りのように大事にしているのは、肉親の愛を知らない自分を大事にしてくれたお義父さんへの恩を感じているからなのです。

 嫁ぎ先に金の無心にやってきた母親のせいで、自分は離縁されてしまったのだと恨みの言葉を吐くお咲さんは、まだ25歳だというのに、先の見えない毎日を送っているのが不憫です。

 でも、一生懸命に働いているお咲さんですもの、ちゃんと見てくれている人はいるんだから、きっといいことがありますって!

 

この8編が収められています。

・銀の猫
・隠居道楽
・福来雀
・春蘭
・半化粧
・菊と秋刀魚
・狸寝入り
・今朝の春

2592冊目(今年291冊目)

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