『ファイティング寿限無』 立川談四楼 313
16歳で高校を中退して橘家龍太楼の弟子となった小龍は、師匠の「落語以外の特技を身につけろ、落語以外で売れる方法を考えろ」という言葉に触発されて、ボクシングジムへ通うようになります。そこでトレーニングをし、プロテストに合格。龍太楼師匠にリングネームを付けてくださいとお願いして、頂いた名前が「ファイティング寿限無」でした。
落語の方は、もう少しで二つ目になれそうなところなのですが、ボクサーとしての才能も意外にあったようで、落語とボクシングの二刀流ということで、小龍はマスコミで取り上げられるようになったのですが、ボクシングもできる噺家「小龍」ではなく、落語もできるボクサー「ファイティング寿限無」として世間に認知されつつある自分に疑問を感じるようになってしまったんです。
ボクサーとして初めて後楽園ホールの控室に入った時に、同じ控室でも落語の時とは随分雰囲気が違うんだなっていう視点が、とっても面白いなと思います。終盤に登場する両国国技館の支度部屋の感想にも、ニヤニヤしちゃいます。
この作品を書いたのは立川談四楼さん、あの立川談志師匠の四番目のお弟子さんです。ですから、この話に登場する龍太楼師匠のモデルはもちろん談志師匠、厳しいけど面白い師匠として描かれています。著者自身も落語と文筆という二刀流、師匠からの「落語以外の特技を身につけろ、落語以外で売れる方法を考えろ」というのは、本当に師匠からそう言われていたのかもしれないなぁと思えてきました。
落語は歳をとってもできるけど、ボクシングは若いうちにしかできないから、思いっきりやってこいと言ってくれる師匠がいたからこそ二刀流が成立したのですが、とはいってもどちらも片手間にできるようなことではなくて、その狭間で心が揺れる小龍くん。でも、今できることを必死にやるしかないと頑張る彼の姿はとても清々しいです。
この本を読んだ後、「楽しかったなぁ~」って気分が溢れてきました。そうだよね、やりたかったらやっちゃうしかないんだよね!
2614冊目(今年313冊目)
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