『両手にトカレフ』 ブレイディみかこ 325
様々なことから解放されるから、だろうね。僕は若い人はもっと解放された方がいいと思う。『しかたがない』と諦めず、別の世界(オルタナティブ)はあると信じられれば、それは可能になるんだ。すべての本ではないが、いくつかの本はその助けになる。あの本はその一冊だよ。(本文より)
あのおじさんがミアに渡してくれた本は、金子文子の幼いころの話でした。依存症で生活保護を受けている母と幼い弟を支えながら生きている14歳のミアは、その日その日を生きるのがやっとで、夢とか希望を考えるなんてことがなかったんだけど、この本を読むようになってから、つらいのは自分だけじゃないということに気がついたんです。そして、孤立無援になっていくフミコの強さに惹かれていったのです。
自分なんて何のとりえもないって思っていたのに、クラスメートのウィルからミアが書く詩は素晴らしい、ラップの詩を書いて欲しいと言われました。評価されるとか、褒められるということに慣れていないミアは、ウィルの言葉を信じることができません。ミアから拒まれても、ウィルは諦めず、何度も一緒にやろうよと声を掛けてきます。
時代も国も違うのに、フミコの人生とミアの人生がオーバーラップしてくるところが凄い!
親だから子供を大事にするはずなんて世間の人は思ってるけど、そんなこと考えもしない親もいるんだよ。親がダメでも祖父母とか親戚とかに愛があればいいんだけどね。そんなものを持ち合わせていない大人ばっかりに囲まれて育ってしまうと、誰の言うことも信じられなくなっちゃう。それが負のスパイラルの始まりなんだね。
つらい、やりきれない、悲しい、でも、これが現実。時代も国も関係ないんだね。でも、それに流されていっちゃいけないと頑張る人、手を差し伸べる人、そんな人たちがいるんだ。
きみの詩には力がある、心の奥底からの思いがそこにある。だから、生き抜いていこうよ、ミア!
2626冊目(今年325冊目)
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