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『絶望の国の幸福な若者たち』 古市憲寿 323

絶望の国の幸福な若者たち

古市憲寿(ふるいち のりとし)

講談社+α文庫

だけど誰も斎藤佑樹や『ONE PIECE』の麦わら海賊団を「内向き」とは評さない。それは、みんな斎藤佑樹や麦わら海賊団の活躍を知っているからである。社会学者の宮台真司がかつて指摘したように、仲間集団という「島宇宙」は他の「島宇宙」からは見えにくい。
その意味で、若者を一方的に「内向き」と断じてしまうのは「若者」という「島宇宙」を知らないがゆえの嘆きともいえるだろう。だって、大学卒業後、一つの企業だけで働き、出世レースに明け暮れて、趣味と言えばゴルフとマージャンくらいしか知らない「お父さん」のほうが、僕から見ればよっぽど「内向き」に見える。p141

 日本の若者は「内向き」であるとか、「消費意欲が低い」とか「外国旅行に興味がない」とか、中高年の大人たちは声高に言います。でも、それは本当なのか?と考えてみると、どうもそれは違っているようなのです。若者たちが興味あるもの、お金を使う対象などのことを大人たちがわかっていないだけなのです。

 サッカーのワールドカップがあれば、そこに若者たちが大挙して訪れています。『ONE PIECE 第100巻』は1週間で117.3万部を売上げ、2021/9/13付「オリコン週間コミックランキング」で1位を獲得しています。

 大人たちがが考える外国の概念や、消費パターンとは違う所に若者たちが向かっているから、それが目に入らないというのが事実なのです。

 

普通、モノやサービスを買う時には複数の選択肢が用意されている。ホームセキュリティならセコムかアルソックか、スポーツウェアならナイキかアディダスか、というように、しかし「日本」には競合他社がいない。だから「日本」内にいる限り、僕たちは当り前のように「日本」の提供するサービスを「一式」という形で買うしかない。
しかも、多くの人はサービスを買っているという意識もあまりない。なぜなら、「日本に住むことによって得られるサービス一式」(税金)は給与から天引きされてしまうことが多いためだ。p166

 円安になって、円がなぜこんなにも弱くなったのか、どうして日本の給与水準はこんなに低いのかが見えてくるようになりました。コロナ過の制限が緩和されて、外国人が日本に入ってくるようになり、彼らが口を揃えて日本は物価が安くていいねというのを聞いて、初めて現状を知った人が多いのではないでしょうか。

 ハロウィーンの雑踏と言えば、渋谷のスクランブル交差点を思い浮かべる人が多いでしょうが、先日、ソウルで起きた雑踏事故のニュースで、ソウルの梨泰院という繁華街にあんなにも大勢の人が集まるということを、わたしは初めて知りました。この事件がなかったら、韓国好きの人なら知ってて当然だけど、そうでない人にとってはいまだに知られていない事実だったのかもしれません。

 外の世界を見ないでいると、日本の常識だけで生きて行けると思ってしまいます。それと同じように老人の常識だけで生きていると、若者の常識とどれほど違っているかに気が付きません。

 それなのに自分たちの尺度で「今時の若者は」というのは、とても危ういことだと思うのです。育ってきた環境が違うのだし、今の日本は昔の日本とは違うのです。日本はもはや先進国でも技術大国でもないのです。

 「頑張ればなんとかなる」とか「努力は絶対に報われる」なんて勘違いを捨てて、それなりな幸せを見つけている若者たちの邪魔をしないようにすることこそが、老人の役割であると思うのですが、そうは割り切れずにいる人たちが多くて困ります。

 わたし自身もそうならないように気を付けなくっちゃ!

2623冊目(今年323冊目)

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