『チップス先生さようなら』 ジョイムズ・ヒルトン 309
この作品は1934年(昭和9年)にイギリスで発表されたものです。大ベストセラーとなり、2回映画化( 1939年のロバート・ドーナット主演と1969年のピーター・オトゥール主演)もされています。
全寮制男子校でギリシア語とラテン語を教える教師であったチップス先生は、みんなから愛される人でした。
頑固というか、生真面目というか、いかにもイギリスのパブリックスクールの先生らしい気質のチップス先生ですけど、いつもユーモアを忘れず、自分が信じることを貫き通しているところを生徒たちが愛しているのです。ですから、卒業後に学校を訪れれば必ず「チップス先生は、お元気ですか?」と挨拶にやってきます。「学生時代はできの悪い生徒だった」と言われても、「先生がおっしゃる通りです」と笑ってくれる、いい関係が築かれているのです。
若い校長から学校を辞めてくれないかという打診があったときも、学生たちや同僚の先生たちから「そんなことはあり得ない」「辞めさせないでください」コールが起きるほど。
敵国であるドイツで従軍して亡くなった元教師のことも、他の人たちと同じように悼むチップス先生の行動に、とても感動してしまいました。属している国が違っても、元同僚であることに変わりはないのですから。
退職後も学校のすぐそばに下宿して、暇があれば校内を散歩したり、スポーツイベントを観戦したり、こういう老後を過ごせるなんて、なんて幸せな人なのでしょう!
そして、チップス先生のようのすてきな先生の授業を受けることができて、すてきな学校生活が送れた生徒たちは何と幸せなのでしょうか!
2610冊目(今年309冊目)
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