『点子ちゃんとアントン』 エーリッヒ・ケストナー 344
点子ちゃんは豊かなボッゲ家のお嬢さんです。アンダハト嬢という住込みの養育係が点子ちゃんの面倒を見ているし、家事はふとっちょベルタさんが一手に引き受けているから、お母さんは好きなだけ外出やパーティーができるけど、点子ちゃんのことは余り気にしてくれません。お父さんは仕事中心の人で、家のことにはほとんど口出しをしません。
点子ちゃんはアントンという貧しいけれどしっかりとした男の子と友達になりました。彼はお母さんとふたり暮らしなのですが、お母さんが病気で寝ているので、ごはんを作ったり生活費を稼いだりしています。
点子ちゃんは元気で活動的な子なんだけど、本当は両親にもうちょっと構って欲しいんだろうなぁ。
アンダハト嬢は、恋人のローベルトと怪しい相談をしています。いったい何をしようとしているのかしら?
この物語が最初に発表されたのは1929年です。この本を読んでいて感じたのは、この当時のベルリンが豊かな町だということです。町に活気があって、子どもたちはみな学校へ通えていて、それなりにいい時代だったんだなと感じます。この後にナチスが国を支配するようになるのですが、平和を願う作者の祈りを感じます。
貧しいけれど力を合わせて生きているアントンと母親、豊かだけれどそれぞれがバラバラのことを考えている点子ちゃんの家族。悪だくみをしている若い男女。様々な人達の生き方を見ながら、子どもたちは育っていくのですね。
この本のことは知っていたけれど、今までずっと読まずにいましたが、中島京子さんの「ワンダーランドに卒業はない」で紹介されていたので読んでみました。
ケストナーは、子どもたちの未来が明るいものであることを願って、この物語を書いたのでしょうね。
2645冊目(今年344冊目)
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