『おとうさんとぼく』 e.o.プラウエン 340
「おとうさんとぼく」は1934年12月13日から1937年12月までドイツで当時もっとも読まれていた週刊誌「ベルリングラフ」に掲載されていました。ナチスドイツから執筆禁止と命じられていたエーリヒ・オーザーは、e.o.プラウエンという偽名でこの作品を書いていました。
暗い世の中で、この作品の明るさは庶民の心を掴んだのでしょう。いたずら好きなおとうさんとぼくの話は、大人気になったのだそうです。
4コマから8コマで描かれているマンガにセリフはありません。でも、自分も子どもの頃にこんなことしたなとか、嫌な奴にはこんな目に合わせたいななんて、思わせてくれるストーリーがとても心地よいのです。
岩波少年文庫の中で唯一のマンガであるこの作品のことを知って、図書館で探してきました。いやぁ、面白い!
エーリヒ・オーザー、エーリヒ・クナウフ、エーリヒ・ケストナーは、2人がプラウエン出身、1人がドレスデン出身のザクセン人ばかり。それぞれ勘ぐ職人、植字工、教師の職を放りだして、自らの才能に賭け、成功を手に入れたものの、1人を除いてヒトラーのもとで命を失った。(エーリヒ・ケストナー)
この3人はともに働き、すばらしい作品を作ってきたのに、ナチスに迫害され、2人は命を失ったのです。エーリヒ・ケストナーだけが生き残り、その後も作品を書きつづけました。それは、亡くなった2人の分も頑張らねばという強い気持ちがあったからこそなのだと思います。
e.o.プラウンエン(エーリヒ・オーザー)のこの作品、ぜひ読んでみて下さい。時代を超越した父と子の愛に溢れています。
2641冊目(今年340冊目)
« 『ハロルドとモード』 コリン・ヒギンズ 339 | トップページ | 『人間の値打ち』 鎌田實 341 »
「海外 児童書」カテゴリの記事
- 『図書館に児童室ができた日』 ジャン・ピンボロー 127(2023.05.07)
- 『名前のない人』 クリス・ヴァン・オールスバーグ 91(2023.04.02)
- 『おばけのキルト』 リール・ネルソン、バイロン・エッゲンシュワイラー 63(2023.03.05)
- 『こねこの はなしではない おはなし』 ランドール・ド・セーヴ カーソン・エリス 47(2023.02.17)
コメント