『常設展示室』 原田マハ 338
この短編集に登場する人の多くは絵画に携わっている人たちです。美術館の職員、画廊や絵画ビジネスに携わる人、絵を描く人。その多くが子供のころから絵が好きで、美術部にいたり、美大へ行ったりしたけれど絵画のプロとしての才能はないけれど、絵画に携わっていたいと思って現在の仕事を選んだ人たちです。
元々は絵画にさほど興味がなかったのに、何かのきっかけで絵画の魅力に気がつく人もいるのです。「マドンナ」に登場する、それまで絵画に何の興味もなかった母親のように、古い雑誌の中にあった1枚の絵に何かを感じて、その絵を切り抜いて仕事場に貼っていたという話は、本当の意味での絵画の力を感じるのです。
写真で見た絵画が気に入って実物を見に行くと、写真では想像もできなかったことを感じることが多いのです。モネの睡蓮を見た時には、その圧倒的な迫力に度肝を抜かれました。睡蓮の池のほとりに自分がいるような気持ちになってしまったのです。この短編集にも登場しましたけど、東山魁夷の絵には吸い込まれそうになってしまいました。
常設展示室で、多くの絵画が待っていてくれます。誰が描いたかとか、有名な絵だとか、そういうことは抜きにして自分が好きな絵を見つけに美術館へ行きたくなりました。
この6篇が収められています。
・群青 The Color of Life
・デルフトの眺望 A View of Delft
・マドンナ Madonna
・薔薇色の人生 La vie en rose
・豪奢 Luxe
・道 La Strada
2639冊目(今年338冊目)
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