『永遠のおでかけ』 益田ミリ 333
ミリさんのお父さんの具合が悪くなり、あと半年という宣告を受けてからのことが書かれたエッセイです。
とにかく病院はイヤだから家に帰りたいというお父さんの意思を尊重して在宅療養になってから、ミリさんはお父さんの昔話を聞くことにしたのだそうです。メモを手に質問すると嬉しそうに答える父。これまでは、いろんなことが面倒くさいなぁと思っていたお父さんだけど、昔のことをいろいろと話してくれるのは、優しいお父さん。若くして亡くなったのでミリさんは会ったことがないお祖父さんのことや、小さかったころに食べたもののこと、などなど。
現在の話では話が弾まなくても、昔話ならいくらでも出てくるって不思議ですよね。
わたしも父が子供だった頃の話をいろいろと聞きました。極寒の北海道で新巻鮭を買いに行った話、リンゴの収穫期には学校が休みになって家族全員で収穫した話、冬の青函連絡船はとても揺れて畳の上をゴロゴロ転がった話、そういう話をしてもらうと楽しかったし、ずっと覚えているものですね。
病人を抱えている緊張感。亡くなった時の喪失感とお葬式という現実に立ち向かわなければならない大変さ。銀行やら相続やら、様々な雑事に追われる日々。半年くらいして、やっと少しホッとした時間が生まれてきて、ふとした時に思い出して胸がキュンとする。身近な人がいなくなるって、とても大変なことなんです。
つらいといえば、確かにつらいんですけど、あと半年という時間を与えられたのは幸せなことだと思います。その間にしておきたいことが色々ありますからね。全部はできなくても、お父さんが好きな「あれを食べてもらおう」「あそこへ行けるかな」なんて考えたことが何よりの親孝行なんだと思います。
親を見送るって悲しいけど、こうやって見送れるのは幸せなんだと思いますよ、ミリさん。
2634冊目(今年333冊目)
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