『ハロルドとモード』 コリン・ヒギンズ 339
19歳のハロルドは、毎日のように母親の前で自殺のマネをしています。でも母親は慣れきっていて、ビックリもしてくれません。
それでも懲りずに首を吊ったり、手首を切ったりして見せているハロルド。愛車は霊柩車、他人の葬式を見に行くのが趣味という変な彼だけど、ある日出会ったモードという79歳の女性が妙に気になるのです。
モードは楽しいことが好きで、自分がやりたいと思うことは何でもやってしまいます。他人からは規則違反だとか、常識外れだとか言われてしまうけど、そんなことはどこ吹く風。警官に呼び止められたって振り切ってしまうほどです。
ハロルドは結構なお金持ちの家の子らしいけど、母親にちっとも構ってもらえなくて寂しいんだろうなぁ。でも、家を飛び出す勇気はありません。
モードが若いころに戦争があって、そこで辛い経験をしたらしいのだけど、だからこそ今は自由に、楽しく生きています。そんなモードにハロルドは恋をしました。
この物語はヒギンズが大学の修士製作作品としてシナリオを書き、1971年に映画化されました。そのシナリオを元に小説として発表し、日本語版も出版されたのですが、長いこと絶版になっていたのだそうです。黒柳徹子さん主演の舞台が評判になったこともあって、再度出版されたようです。
モードのように自由に生きられるのも、自由に死ねるのも凄いなぁ。そういう人生が羨ましいって言ったら、「自分の人生なんだもの、どんなことでもできるのよ!」ってモードに言われそうな気がするラストでした。
2640冊目(今年339冊目)
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