『分岐駅まほろし』 清水晴木 360
もしもあの時、ひとこと言えていたら、別の道に進んでいたらという思いを、誰しも持っているものです。そんな運命の分岐点に戻れるとしたら、戻ってみたいと思いますか?
満月の夜に総武線の平井駅と新小岩駅の間の荒川を通過するとき、後悔する気持ちを抱えた人だけがたどり着くのが「分岐駅まほろし」なのです。
この出だしを読んだときに、わたしの耳には荒川の鉄橋を渡るときの「ダダ、ダダーン」という音が聞こえてきました。学生時代に毎日乗っていた総武線。席で寝てしまっても、この音で必ず目が覚めるので乗り越したことはありませんでした。
もしも、あの時に帰ってやり直せたらと思うことはいろいろあります。でも、そうはいかないのです。だから、あの時に選択したことが間違いではなかったと思えたら、それでいいんです。それが自分の運命だと確信できたら、いいんです。
この物語に登場する人たちは、まほろし駅にたどりついたおかげで、あれは後悔することではなかったのだと思えるようになったのです。
第一話 もしもあの時、告白をしていたら
第二話 もしもあの時、第一志望の大学に合格していたら
第三話 もしもあの時、夢を追わなければ
第四話 もしもあの時、病院に連れていっていたら
第五話 もしも、あの時ー
平井の河川敷の欅の木のシーンが印象的でした。
ポピーが咲くころに見に行こうかなぁ!
2661冊目(今年360冊目)
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