『人生を変える読書』 美達大和 345
著者の美達さんは終身刑で、刑務所の中で暮らしています。元々読書家だった彼は、自由時間のほとんどを読書とその記録を書くことに費やしています。刑務所の自分の部屋の中における私物の数が限られているので、読んだ本は外の世界へ送っているそうです。ですから、一度読んだ本を読み返すということができません。その分、真剣に読み、記憶に残す努力をしているのだそうです。
どう考えても己に非がないのに、なぜ自分が変わらなくてはならないのか、あんな奴のために妥協するのか、と割り切れない思いを抱えて暮らす日が少なくなかったのでした。
しかし、ある時、相手の側に立って、私とのやりとりを考えてみたのです。何であれ、きっちりと白黒をつけないと気がすまない私に、反論の余地なく追及され、謝罪させられるのは、自分に非があったにせよ、相手が面白いはずがありません。
そのことに気づいてからは、非は向こうにあると思っても、これは自分の精神の健康・平穏と対人スキル向上の訓練だと思い、できるだけ気にしないように心がけています。
~中略~
振り返ってみると、高い対人知性を身につけるというのは、相手ばかりではなく、周囲と、そして何よりも自分を幸福にすることだと気付きました。日々の快・不快や幸福感というのは、その多くが対人関係に影響されています。
それは相手がどうであれ、自らの処し方、感じ方でどうにでも折り合いがつくのです。このことに気がつくまで、随分と遠回りをしたものだと残念でなりません。p49
美達さんはとても聡明な方だし、責任感もあります。でも、余りにも完璧主義者だったのでしょうね。それが罪を犯した原因だったのでしょう。刑務所の中で深く考え、きちんと反省されているし、とても真面目に生きています。だからこそ、模範囚になって出所するよりも、一生刑務所の中で生きようと決めたのだと思います。
本の紹介とともに語られる美達さんの経験や考えから、様々なことを感じました。良いことも、悪いことも、すべてが自分の血となり肉となる。だから、未来へ向かって進めるのだと、力を貰えた一冊でした。
2646冊目(今年345冊目)
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