『おいしいごはんが食べられますように』 高瀬隼子 3
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
二谷さんは、同僚としてはいい人なんだろうなぁ。押尾さんは体調が悪くても頑張る人だけど、それに気づいてもらえないタイプ。芦川さんは「体調が悪いので早く帰らせてください」と言えるし、周りの人たちがそれを認めてしまうようなタイプ。
芦川さんは身体が弱いから、みんなで守ってあげようねって暗黙の了解があって、それをわかっている芦川さんは時々お菓子を作って「みなさん、いつもありがとうございます」と言いながら、みんなに配ってる。
それを普通に受け入れてしまう人がほとんどなんだけど、そういうのがイヤだなって思っている人もいるのよね。でも、本人に「そんなことしないでくださいよ」って言ったら面倒くさいことになるので何も言わない。それが二谷さん。
芦川さんから「身体にいいもの食べてね」って言われても、心の奥底で「そんなこと、いちいち言われたくないよ」「残業で遅く帰ってきてから自炊なんか無理だよ」って思ってるけど、芦川さんは可愛いなって思ってる二谷さんの二面性がどこか薄気味悪い気がします。
みんな残業しているのに、芦川さんだけ身体が弱いから定時で帰っていいよっていう空気に押尾さんはイラついてるんだろうなぁ。頭では理解できても「弱者最強」なのに苛立ってるんだろうなぁ。誰があんたの分まで働いていると思ってるんだよ~!お菓子なんか作るくらい元気なら、そのぶん働いてくれよ~!って思ってるんだろうなぁ、きっと。
表面上は仲良くしていても、本当は何を考えているのかわからない関係って、イヤだねぇ、疲れるねぇ。そこら辺のところが見事に描かれているこの作品、読み終わってからもなんだかザラザラした気持ちが残っていて、ちょっと怖いなぁ。
2665冊目(今年3冊目)
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