『タクジョ!』 小野寺史宜 43
夏子さんは新卒でタクシードライバーになりました。いろんなお客さんが乗ってくれて、「女性なんだ!」と驚いたり、「頑張ってね」と応援してくれたり、自分の名刺をくれる人までいます。
仕事中はバラバラなので、会社の人たちと話をしたりすることは余りないのですが、数少ない女性ドライバーとしての話を聞きたいので、先輩の石塚水音さんとは、タイミングが合えばなるべく話を聞くことにしています。
乗務が終わって洗車の時によく会う姫野さんは、イケメンなのにチャラいのが残念な人ですけど、彼なりに夏子さんのことを心配してくれてるらしいです。
みんなから「怖いねぇ」と言われている道上さんは中年のドライバー、いかついおじさんですけど、話してみるといい人で、彼なりに苦労をしてきたようです。
乗務パターンはいろいろありますけど、夏子さんは「隔日勤務」なので、朝から朝までの乗務です。走行距離は1日365kmまでと決められているけれど、それなりにキツイ仕事です。日勤も選択できるけど、今のところこのままで頑張るつもりです。
タクシードライバーという仕事は、いろんな意味で危険と隣り合わせです。運転自体気をつけなければいけないし、それ以上に気をつけなければならないのが悪いお客さんです。篭脱け(お金を家に取りに行くと言って帰ってこない、無賃乗車)とか、強盗とか、泥酔している客とか、訳のわからないクレーマーとか。
でもほとんどの人はちゃんとしたお客様だから、気持ちよく乗車してもらうことを一番に考えるのがタクシードライバー、夏子さんはそういう自分の仕事を気に入っています。でも「女性だとこの仕事は危ないんじゃない?」といろんな人に言われます。それをもっともだと思う気持ちと、それも分かってこの仕事を選んだんだからという気持ちの間で、悩んでしまうこともあります。
夏子さんのように、男性が多い仕事に就く若い女性が増えています。それに対していろんなことを言われます。モチロン悪意からだけではないことは分かっているけれど、でも、余計なことを言う人が多いなぁって思います。彼女のような人たちの力で、女性の仕事選択の自由が広がっていくのですよね。
がんばれ、夏子さん!
小野寺作品でよくあるリンクですけど、春行が出演しているTVドラマを観てたり、横尾成吾さん原作の「キノカ」という映画を観に行ってました(笑)
2705冊目(今年43冊目)
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